けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

水の質⑤(注:他のメディアに限定公開していた記事に手を加えたもの)

2017年2月22日水曜日。
ついに、待ちに待った軟水器が我が家にやってくる日が来た!

 

夫はこの日ロンドンで打ち合わせがあったので、娘を保育園へ送り届けたあとすぐにロンドンへ行ってしまった。1人になった私は家で仕事をしながら配管工の到着を待った。すると11時少し前に配管工から電話があり、到着は12時ごろになるけれどOKですかと確認された。

 

設置工事は1時間ぐらいで完了すると思っていたので、ランチは配管工が帰ってからにしようと決め、仕事を続けた。前夜の晩御飯の残り物(和風ミンチパイ)を温めなおして食べる予定だったので、軟水の料理への影響は晩御飯のときに検証することになる。だが、配管工には作業中に労いのお茶を出すべきだろうか。この人物は硬水で淹れたコクのある紅茶を好むのだろうか、それとも、自分が勤務するメーカーの軟水器を使っていて、軟水で淹れた紅茶に慣れているのだろうか。それによって、お茶を出すタイミングが変わってくる。

 

そんな思いを巡らせているうちに時間が経ち、ドアベルが鳴った。時計を見ると12時ぴったりであった。やって来た配管工は、30代手前とおぼしきやんちゃ顔の男性だった。イケメンではない。男女平等社会を謳う21世紀では、「XYは男性の職業、XXは女性の職業」といった固定概念にとらわれてはいけない。だから、「配管工は…男性だった」というように、やって来た職人の性別を明記するべきであろう。だが、個人的には女性の配管工や土方に出会ったことはまだない。

 

配管工はまず、我が家の水道の元栓の位置を確認した。私はこういうことは普段夫に任せているので、元栓がどこにあるのか把握していなかった。一般的にはキッチンの流し台の下なので、そこを見せたが違うと言われた。色々心をあたりを見せたところ、正解は玄関ドアのすぐに隣にあるトイレの中だった。我が家にはトイレが3箇所ある。この玄関の隣のものと、日本式2階の階段を上がった向かいにあるファミリーバスルーム、そして夫婦の寝室(といっても娘に占領されがち)であるマスターベッドルーム内のシャワールーム。水道の元栓がキッチンの流し台の下にあったのなら、飲料水を硬水のままにするために軟水器を通さない蛇口を設置することができるそうだが、我が家の元栓はトイレ内にあるのでそれはできないと言われた。夫も私も硬水の飲料水にはこだわらないので、問題はないと答えると、軟水器を設置する位置を教えてくれた。トイレの中はスペースがないので、壁を挟んだ外側、玄関ポーチの一角である。ここは玄関屋根の下で、今までプランターに植えた花(ロベリア)を飾っていた場所だ。花はすっかり枯れてしまっているからプランターを除去しても差し障りはない。

 

軟水器設置工事が始まった。1時間ぐらいで終わるとタカをくくっていたが、なかなか終わりそうにない。1時過ぎにお茶とお菓子をすすめたが、結構ですと断られた。そこで私はダイニングルームでランチを食べることにした。着工から約2時間後、ついに軟水器の設置工事が完了した。玄関ポーチの一角に設置された軟水器は、木製の保護ケースの中に収納されている。配管工が使い方を教えてくれたが、実に簡単だ。さあ、これでケラスターゼの美髪をなびかせる日々が始まる!素敵だ素敵だ!

 

あいにく、この日の晩御飯には肉の煮込みを予定していなかったし、お米はまだ数日前に炊き出して冷凍してあるものが残っていたので、軟水の料理への影響は検証できなかった。お茶は夜なのでカフェインのないハーブティーとローイボスティー。こちらも、軟水器が稼働する前にブリタに通しておいた水で淹れたので、違いはわからない。だが、手を洗ったあとの肌のコンディションは確かに違った。軟水を全身で最初に体験したのは娘であった。夫と私は朝にシャワーを浴びるが、シャワー嫌いの娘は夜にお風呂に入る。この日は娘のシャンプーの日だったので、普段使っている子供用のシャンプーで髪を洗ってやった。娘は生まれたときは直毛であったが、2歳になる少し前からクルンクルンの巻き毛に髪質が変化した。だから非常にもつれやすい。シャンプーのあとにタオルで髪を乾かすと、ヘアブラシがなかなか通らないほどもつれる。セラムを塗ってやってもスムーズに通らない。娘の髪をブラシでとかすときはいつも、イタイイタイ〜ッ!(英語で言うのでOuch!Ouch!)と泣き叫ぶので、まるで虐待しているかのようだ。ところがこの夜、軟水でシャンプーした娘の髪は、タオルで乾かしたあともしっとりしていて、ブラシの通りが良かった。そしてヘアドライヤーで乾かしたあとの髪は、ツヤツヤと輝いている。これはすごい!

 

そして翌朝。普段の娘の寝起き直後の髪は、まるで巨大な鳥の巣。クルンクルンの巻き毛がまるで爆発現場にいたかのように、縮れまくりもつれまくって大変なことになっている。これをブラシでとかすために、逃げ回る娘を追いかけ回すのが朝の恒例行事であった。軟水でシャンプーした翌朝の娘の髪はやはり鳥の巣状態であったが、それでもいつもよりボリュームがかなり少なかった。ブラシを手にした私を見ると娘は一目散に逃げ出したが、夫とのチームプレーで捕獲し、髪をとかした。すると、普段より驚くほどブラシの通りが良かった。いつもより痛くなかったので、娘も驚いたようだ。

 

そしてついに私のシャワータイム。ワクワクしながらいつも使っているシャンプーで髪を洗った。これは、「ヘアケア専門家おすすめ」という触れ込みの商品だが、ごく普通のスーパーで買えるお手頃価格のもの。お揃いのコンディショナーも使っている。普段なら、このあとにロレアルの縮れ毛解消用のヘアセラムをたっぷり塗り込む。ときにはさらにアルガンオイルを頭皮にもみ込んだり、Lushの毛先専用ヘアバームShine So Bright(日本市場では「ハッピーエンド」)をプラスしたりする。だが、この日はコンディショナーまでにした。

 

濡れたままの髪の手触りがすでに違う。タオルで乾かしたあと、そのままブラシをかけると驚くほどすっと通る。これはケラスターゼの洗い上がり!と、期待でテンションがどんどん上がってくる。ドライヤーに向かうまえに第一段階の結果を夫に報告すると、彼もかなり興味を示した。

 

そしてドライヤー。普段からブロースタイリングなどと手の込んだことはしない私だが、今までは前髪の付け根付近の縮れが気になるので必ずヘアアイロンで伸ばしていた。軟水で洗った髪は、ドライヤーの風にしなやかになびいていた。適度のコシがあり、絶妙な重さを感じる。そして乾いていくごとに髪がツヤツヤと輝き出す。これは、まさにケラスターゼの仕上がり!あゝ、あの夢にまで見た質感!乾き上がった髪は、ツルツルで指がすっと通る。パサパサ感が一切なく、例の前髪の付け根も気になるほど縮れていない。適度なウェーブでいい感じだ。見た目も手触りもなんともシルキー!今まで、ヘアセラムやバームを使っても、ここまで満足のいく仕上がりは達成できなかった。感動で涙が出そうになった。本文内にFBのスタンプを挿入できないのが残念だが、この瞬間の私は、バラの花に囲まれてウルウルとデカ目を輝かせるブルーキャットであった!

 

感動と狂喜で興奮を抑えられない私は夫のもとに走り、彼に髪を触らせた。すると夫も、おおおおお〜〜っ!と感心した。素晴らしい!普段なら、すぐにひっつめ髪にする私だが、この日はシルキーな質感と絶妙なさじ加減でウェーブしている美髪を満喫することにした。この手触りには快感を覚えてしまう。側から見ると苛立たしい仕草かもしれないが、髪に指を通して香りをかぐのがやめられない。軟水器が収納されている木製の保護ケースは、今後我が家の神棚になりそうだ。

 

こうしてツヤツヤと輝く美髪を誇らし気になびかせ、ルンルンの幸せ気分で娘のバレエレッスンに向かう私であった。(ちなみに、普段ならボサボサの娘の巻き毛も、いつもよりまとまりがあり、輝いていた。)

 

 

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*写真No1: 硬水で洗った髪。ボサボサ、パサパサ…だから不機嫌。

写真No2: 軟水で洗った美髪。写真では分かりにくいかもしれないが、シルキーにツヤとコシで絶妙なゆるウェーブが自然に出ている。これはドライヤーで簡単に乾かしただけで、スタイリングなど手の込んだことは一切していない。ケラスターゼを使わずにケラスターゼと同じ至福の仕上がり!💖

注: どちらの写真にも特殊効果はかけていない。