けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

水の質②(注:他のメディアに限定公開していた記事に手を加えたもの)

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*写真No1:訪問実演のときに写真を撮らなかったので、水処理機器の総合メーカー(株)トーケミのホームページから拝借。右が水道水で左が軟水器を通した水。ただしこれは日本の水道水なので全硬度は我が家の水道水よりずっと低い。だから我が家での実演では、泡立ちの差はこの写真より著しかった。

*写真No2:我が家の温水器のパイプにこびりついているライムスケールの塊



訪問販売員の説明に納得したので、まずはこのメーカーの軟水器の実演のアポを取ることに合意した。こうして、1週間後に別の販売員が実演に来てくれることになった。

アポの当日、やって来たのはこのメーカーに勤めて16年という女性。ヘビースモーカーなのか、ものすごいダミ声の持ち主で、50代前半ぐらいに見えた(まだ50歳になっていないのなら失礼!)。スリムな長身に真っ赤なボディコンドレスを纏い、足元は10cmぐらいありそうなスティレットヒールの黒のパンプスという出で立ちだった。

ナイトクラブにでも行くかのよう装束と軟水器の実演というのはかなりミスマッチだと思ったが、実演は非常に興味深かった。最初に行われたのは、キッチンの蛇口から出した水と、蛇口の水を軟水器に通したもので、同じ石鹸を使って手を洗うという実験だった。硬水である蛇口の水ではいつものように表面の皮膚が突っ張る感じがしたが、軟水器を通した水ではヌメヌメ感があり、手を拭いたあとの肌はしっとりしていた。これは、硬水に多く含まれるカルシウムやマグネシウムが、皮膚が自然に生成する保護脂質を洗い流してしまうからだそうだ。硬水で髪を洗うとパサパサ、ゴワゴワになるのも同じ理由。

次は、硬水を入れた試験管と軟水の試験管に、同じ液体洗剤をまったく同量入れてよく振るというもの。すると、軟水の方が断然泡立ちがいい。そしてしばらく置くと、軟水は泡の下の水がほぼ透明なのに対して、硬水では泡がほとんど消えてなくなり、水は大量の石鹸カスで白く濁っていた。だからこちらでは、シャワーやバスルームは使用後必ず水ですすいでいても、頻繁にクレンザーで掃除しないと、ライムスケールだけでなく、(酸化して?)赤くなった石鹸カスがそこら中に出現する。放っておくとカビや雑菌の温床になって不衛生だ。

また、この泡立ちの違いは、私の食器洗い用洗剤の消費量を省みると、なるほど!とくる。我が家ではほとんどの食器を食器洗い機(欧米のモデルは日本のものよりずっと容量が大きくて便利)で洗っているが、それでもやはりデリケートな食器類や調理器具などは手洗いしている。そのとき私は、しっかりした泡立ちを求めて大量の洗剤をスポンジにつけがちだ。しかも一度の食器洗いにそれを数回繰り返している。だから我が家ではビッグサイズの食器洗い用洗剤をストックしており、そのターンオーバーは実に早い。

ダミ声の女性販売員の話では、軟水器を使えば洗剤やクレンザーの消費量がぐっと減り、またスキンケアやヘアケア製品に大金をかける必要性も低くなるうえ、洗濯機や食器洗い機、アイロン、コーヒーメーカーなどの水を使う家電の寿命がのびるため、中長期的に見ればかなりの節約なる。実に理にかなった主張だ。そのうえ、硬水を使っていたために蛇口やシャワーヘッド、水道管のつなぎ目などにこびりついてしまったライムスケールの塊も、軟水を使い続けているうちに自然に落ちていくそうだ。

彼女自身、このメーカーに入社して以来ずっとここの軟水器を使っているが、今でもその効果に心から満足しているという。困ったことや不満に思ったことはなかったか、つまり何らかのデメリットはあるかと夫が問いただすと、彼女は訪問販売員にありがちなポジティブ面だけを並び連ねた即答ではなく、しばらく真剣に考えてから、「そのような例は本当に思い浮かびませんね」と答えた。

実演を見て軟水器のメリットにすっかり納得した夫と私だったが、最大の懸念であるお値段の方は…… やはり、衝動買いできるような価格帯の製品ではない。だが、軟水を使うことで享受できる恩恵は、計り知れないとまではいわずとも、かなり大きいということは確かだ。ダミ声の女性販売員は、分割払いなどの支払いオプションがいくつかあることを説明してくれたが、まずは3ヵ月間の無料トライアルでその効果を実際に体験してみてから決めればいいといった。その期間中は、軟水器に入れるブロック状の塩も無料で提供してくれるらしい。イオン交換樹脂を利用したこの軟水器に必要なブロック状の塩(樹脂が捉えたマグネシウムやカルシウムを塩水がナトリウムイオンに交換することで軟水化するのだそうだ)は、このメーカーのストア以外にもガーデンセンターやDIYショップで買え、2本入りパックの相場はだいたい6ポンド(約850円)ぐらいだそうだ。

私は、里帰り中に堪能していた、まるであのケラスターゼを使っているかのような感動的な髪の洗い上がりを再び!という切望でモチベーションが全開になっていた。

続く