けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

Superdry 極度乾燥(しなさい)と私 ~その ①

「Superdry 極度乾燥(しなさい)」という英国のファッションブランドをご存知だろうか。アメカジヴィンテージ系のブランドなのだが、ここ数年間にヨーロッパの主要都市のいずれかを訪れたことのある人なら、この奇妙な日本語混じりの文字をどデカく掲げたストアを見かけたことがあるのではないだろうか。

 

このブランドが誕生したのは2003年。人気に火が付いたのは5〜6年前だったような気がするが、今では英国内だけでなく、欧州諸国や米国、中東でも爆発的な人気を博しているという。最近になってその不思議なブランド名と驚異的な人気ぶりが日本のメディアでも取り上げられたようだし、並行輸入サイトもあるそうだから、日本人の間でも以外と知名度/認知度があり、人気もじわじわと高まりつつあるのかもしれない。

 

だが、ブランド名はあくまでも単に「Superdry」であって、怪しい日本語を伴った「Superdry 極度乾燥(しなさい)」は、ロゴまたはトレードマークというべきものであろう。そもそも、漢字の読める中国人や韓国人などを除けば、日本語を知らない非日本人にとって、これらの文字はグラフィック以上の意味はない。

 

不可解な日本語のグラフィックは「極度乾燥(しなさい)」だけに止まらない。このブランドのTシャツや人気商品のパーカーの多くには、中国語の簡体字のような文字が並べられたもの(スマホ版サイトをスクリーンショットした下の画像のパーカーがその一例)や、「自動車潤滑」「会員証な」「物のスポーツウェア」などの意味不明な文字がプリントされている。

 

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ここでお断りしておくが、私のこの記事はこのブランドの紹介や検証を目的としているのではなく、(くだらないかもしれないが)私とこのブランドの「愛憎関係」についてしたためるものである。だから、このブランドについてもう少し詳しく日本語で知りたい方には下の記事をおススメする。

 

英国人気ブランド「Superdry 極度乾燥(しなさい)」が日本出店しない理由をあえて聞いてみた | ハーバービジネスオンライン

 

イギリス生まれのブランド『Superdry極度乾燥(しなさい)』が間違った日本語を直さない理由。 | FUKROO [フクロー]

 

SuperDry 極度乾燥(しなさい)はどの位の価格帯か? - Superdry.極度乾燥(しなさい) ヨーロッパ直輸入専門店

 

私がこのブランドを初めて知ったのは、確か今から8年前のことだったと思う。3月の下旬、まだ肌寒さが残る英国を脱出し、とっくに夏モードのフロリダに住む友人の豪邸に数週間ほど居候させてもらうため、ロンドンのヒースロー空港でマイアミ行きの便を待っているときのことだった。

 

スーツケースに入れた夏服セレクションに不安を感じ、服屋を探して空港内ショップ街を徘徊していると、アメカジ系のTシャツやパーカー、ビーチサンダルを豊富に揃えている店に出くわした。「おお、これは目的地のファッションに相応しいではないか」と驚喜した私は、ブランド名を確認せずに中に入って商品を物色し始めた。「極度乾燥(しなさい)」という奇妙な日本語を目にしたのは、あるTシャツのサイズを確認しようとラベルをチェックした時のことである。

 

これがもし漫画の世界であったなら、私のキャラクターの頭上には大きな「????」が浮かんでいたことであろう。よく見ると、どの商品にもこの、完璧に書かれていながらも意味不明の日本語を表示したラベルがついている。それどころか、先述の「自動車潤滑」といった、これまた意味不明の日本語がデザインの一部になっているものもある。「JPN」や「OSAKA」などの文字がプリントされたTシャツもあり、一瞬日本のブランドなのかと思った。だが、日本のブランドなら意味不明な日本語は使わないはず。そして、上の写真と同じ中国語の簡体字のような文字がプリントされた商品を目にしたとき、私はこのブランドが日本のものではないことを確信した。

 

各商品はそれなりの質感があり、デザインもなかなかであったが、Tシャツの値段が私の許容範囲を超えていたのと、不可解な日本語が書かれている点が私の購買意欲を萎えさえた。そのうえ、このようなアメカジTシャツは本場米国のほうがずっと安く手に入るはずだ。

 

 こうして私は理性の声に従い、手ぶらでその店を立ち去ったのだった。

 

~続く~