けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

古人の戒め~その⑥

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セルフヘアカラーキットを使ったDIY Disasterの後始末には限界がある。私のように、DIYバレイヤージュの試みに大失敗している場合には特にそうだ。数週間後のイースター休暇には商用も兼ねて訪日することになっており、東京で仕事の打ち合わせも数件入っている。そのようなかしこまった場に、昭和のヤンキーのような頭で出向くわけにはいかない。プロによるカットでもカバーしきれないほどのDisasterなので、これはやはりプロに丁寧に染め直してもらうしかない。そのことを夫に白状すると、再び呆れられるか馬鹿にされると思っていたが、人間のできた人である夫は同情してくれた。こういうに状況に、「だから最初からプロにやってもらえばよかったのに!」などとツッコミを入れるのは、相手側に「泣きっ面に蜂」か「火に油を注ぐ」という結果を招く。それを心得ているのか、夫は招かれぬコメントは一切しなかった。

 

それから数日後、私の4X歳の誕生日が来た。その日の朝は普段より少し早めに起床した夫と娘が、隣の部屋で何やらコソコソとやっていた。そろそろ私もベッドから出ようかと身を起こしたところ、2人がプレゼントとカードを抱えて「Happy Birthday, Mummy!」と叫びながら寝室に飛び込んできた。さらに娘は私の首に飛びつき、チュウ攻めにしてくれた。何とも素晴らしい誕生日の朝だ。五十路にまた一歩近づいたのを喜ぶ気にはなれないが、このように愛しい人たちに祝ってもらえるというのは、心の底から幸せを感じる。

 

ここで夫と娘からの誕生日プレゼントをリストアップして自慢するつもりはないが、1つ特筆すべきものがある。それは、夫と娘が共同でメッセージを手書きしたバースデーカードの中に同封されていた小さな封筒。その中には、名刺サイズのピンクのカードが入っていた。よく見ると、それは先日私がヘアカットしに行った、あのおばちゃん美容師が営むヘアサロンのギフトクーポンだった。裏側には、「Hair Colouring, £80」と書かれている。ああ、なんとも気が利く夫なのだろう!

 

さっそく私はその日のうちにヘアカラーの予約を入れた。「鉄は熱いうちに打て」とでもいったところだろうか。ちなみにこの格言は日本語に昔からあったものではなく、「Strike while the iron is hot」という英語の格言を訳したものなのだそうだ。そういえば、高校生の頃に『英語の構文150』で暗記させられたイデオムのひとつだ。ヘアカラーの予約は1週間後の木曜日になった。

 

予約の当日、おばちゃん美容師は私の髪の毛をいくつかのセクションに分けてクリップで留め、DIY Disasterのセルフ修正がいかに不十分であったかをiPhoneで撮影してくれた。カットしに行った時にも手鏡で見せてくれたが、確かに滑稽だ。昭和の田舎のヤンキーのようなキンキン状態は解消されているものの、不規則な幅の赤毛のブチや筋があちこちに見られる。まるでパンクのなりそこないのようだ。これを数時間かけてムラなく丁寧に修正してもらった。その結果は下のとおり。

 

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非常に満足のいく出来上がりだが、予定よりもかなり高くついた。夫がくれたギフトクーポンがヘアカラー料金全額をカバーしてくれると期待していたが、染髪剤のタイプだの高級トリートメントだので、60英ポンド(約8500円)の予算オーバー。ここで再びDIYバレイヤージュキット購入時からの総出費額を計算すると、ギフトクーポンの金額を差し引いても165.74英ポンド(約23500円)になる。最初からプロにバレイヤージュをしてもらった場合の想定額は120英ポンドだから、45.74英ポンド(約6500円)の「損」を出している。ギフトクーポンの金額を差し引かない実質の「損」は、なんと125.74英ポンド(約17800円)なのである。すなわち、プロに2回ほどバレイヤージュをしてもらってもお釣りが出るレベルなのだ。

 

まさに、「安物買いの銭失い」の典型。ドアホとしか評価のしようがない。ちなみに、日本語の「安物買いの銭失い」に近い英語の格言は、「Be penny-wise and pound-foolish」ではないだろうか。直訳すれば、「ペニー(英国の下位通貨単位。複数形だとペンス。100ペンス=1ポンド)に賢く、ポンドに愚か」といったところだ。

 

果たして、ドアホの私はこの経験に懲りて古人の戒めを心に刻み、今後はセコイやり方を改めるのだろうか。 

 

それとも、「バカは死んでも治らない」のだろうか。。。