けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

小学生の保護者としての生活

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娘の中間休暇中に活躍したお菓子作りの本

 

久々の投稿だ。前回の投稿は3週間半ぐらい前で、しかも以前に他のメディアに投稿していた記事のリサイクル版だったから、本当の意味での投稿ではない。ネタ詰まりの言い訳に過ぎないのだろうが、仕事や娘のHalf Term Holidayなどで何かと忙しく、自分の考えを文章にまとめる精神的・時間的余裕がなかった。

 

「Half Term Holiday」というものは、日本では馴染みの浅い概念であろう。英国や大陸ヨーロッパのいくつかの国々では、学期の中間に休暇が設けられており(だからここでは以降「中間休暇」とする)、英国の場合だと公立学校は1週間、私立学校は2週間というパターンが多い。娘が通う学校は公立なので、1週間の中間休暇だった。

 

この中間休暇は、実は保護者にとって一種の悩みの種だ。特に共働き夫婦の場合、中間休暇中に子供の世話をどうするかを前もってしっかり計画しなければならない。毎回子供の休暇に合わせて仕事を休める人は数えるほどしかいないだろう。身近に祖父母など、子供を安心して託せる身内がいる人々は非常に恵まれている。子供が休暇に入るたびに自分たちも休暇を取ってどこかへ家族旅行に出かけたり、託児所などへ預ける財力があればいいのだが、そのような経済的余裕がない家庭は四苦八苦する。我が家もそうだ。

 

私の投稿にちょこちょこ登場する娘の「ボーイフレンド」のW君は、父親が教頭を務める名門私立学校の幼稚部に通っている。W君のお母さんの話によると、この学校の生徒の中には、住み込みのNanny(古風な日本語で言うと「乳母」)がいる子供が結構いるそうだ。そして生徒の多くが休暇ごとに家族で海外旅行をしているらしい。家族旅行に出かけない場合も、乳母がいたり、ラグジュアリーな託児サービスを利用したり、充実したアクティビティプログラムに子供を送り込んだりと、休暇中の子供の世話に頭を抱えることはないようだ。さすが大金持ちの子息が通う学校だけあって、世界が違う。W君一家は学校の敷地内にある教員用住宅に住んでいて、私は娘をW君と遊ばせるためによく彼らの家を訪問する。その時に学校内で見かける送り迎えの車はやはり、バリバリの高級車が多い。たまに私のようなボロい大衆車に乗っている人を見かけるが、それは教員・用務員か「乳母」さんたちということらしい。数年前には、とあるロシアの大富豪の御曹司がボディガードを連れて登校していたそうだ。さらにその父親がヘリコプターで息子を学校に送り届けたこともあったというから、あまりにも桁が違いすぎてシュールだ。

 

平民家庭の我が家は夫が1年半前に起業し、自宅を事務所として活動している。私は夫の事業の補佐に加え、フリーランスで翻訳やコンサルティング業を営んでいる。すなわち夫婦共働きであるが、自宅勤務の自営業者だ。時間的には融通が利くのだが、まだまだ家計に余裕はない。そして身近に頼れる身内もいない。だから中間休暇中は家族旅行にも行かず、中間休暇特別託児サービスも利用せず、仕事の案件の多くを断ってほぼフルタイムで娘の相手をしていた。一緒にクッキーを焼いたりしてクオリティな母娘の時間を過ごしたが、やはりあの1週間は何だかんだと大変であった。

 

このように、娘が小学校に入学してからというもの、私たちの毎日は娘の学校生活を中心に回転している。それまでは、週4日の頻度で娘を保育園に通わせていた。近辺には私立の保育園しかなく、政府からの補助金のおかげで週4日通わせることができていたものの、やはり毎月の保育料は我が家の財政にかなりの負担となっていた。それでも保育園では朝8時半から夕方6時まで預かってもらえたため、仕事をする時間は十分にあった。しかも、土日以外の休園日は祝日とクリスマス・新年期間の数日間のみ。これが小学校だと、朝8時55分から午後3時15分まで。朝、娘を学校へ送り届けて帰宅するのはいつもだいたい9時10分頃。家政婦を雇う財力などないため、当然のことながら家事も自分でしっかりやらなければならない。そして午後、お迎えで3時10分までに学校に到着するためには、2時50分頃に自宅を出発しなければならない。娘が学校から帰って来ると、仕事はほぼできなくなる。つまり、日中仕事ができる時間はかなり限られている。

 

娘の小学校は公立で、ありがたいことに学費が無料であるため、その分を託児サービスやお稽古に回すことはできる。そこで、月曜日と火曜日は独立した組織が運営している放課後託児サービスで6時まで預かってもらっている。だがその料金は時間制で、なかなかお高い(しかも政府の補助金は出ない)。だから現在のところ、週2日以上預ける余裕はない。他の日はキックボクシング(これからは女子も強くあるべし!)や演劇レッスン、水泳教室などに通わせている。どのお稽古も、本人が非常にやる気満々で楽しんでいるし、学校とは違った人生スキルを学び取ることができるので、納得のいく投資だと考えている。だがもちろん、放課後託児サービスを利用している月曜日と火曜日以外は、2時50分にすべてを切り上げて学校に向かわねばならない。その後はお稽古などのアクティビティに付き添い、夕食、入浴を済ませて娘が就寝するまでは仕事に手を付けることがほとんどできない。だから夫も私も夜行性動物になりつつある。私は以前、夜のズンバ教室に週数回通っていたが、娘が小学校に入学すると同時に朝のセッションに切り替えた。月曜日と火曜日以外は日中仕事をする時間が限られているため、夜の時間をクリアにしておくためだ。

 

娘が小学校に上がる数ヵ月前から、「学校が始まったら、いい意味でも悪い意味でも生活が一変するわよ!覚悟しなさい!」と周囲の人々によく言われた。確かに、今年の9月以来、私たちもそれをどっぷり実感している。何かとチャレンジはあるが、自分たちの時間の使い方を見直したり、物事の優先順位をしっかりと決めたりと、自分たちのけじめという面でポジティブな影響が多いのも確か。そして何よりも、小学校という新しい世界で様々なことを吸収し、1人の人間として成長していく我が娘を見守るのは、驚きと感動に満ちた、かけがえのない人生体験である。

 

今日は月曜日。娘は6時まで放課後託児サービスで様々なアクティビティに興じているはず。仕事は小口のものが数件あっただけで、夫のフランス出張のためのプレゼンも思ったより早めに仕上げることができた。そこでこの記事をしたためることにしたのだ。

 

娘を迎えに行く時間まであと約1時間。そろそろ夕ご飯の支度をしよう。