けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑫ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

 

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写真はパーティールームでのワンシーン

 

子供たちがガーデンエリアに進出した頃には、時計はすでに15時を過ぎていた。ここのパーティープランでは、75分間の「お遊び時間」に続き、45分間のパーティールームでのパーティーということになっていたので、あと少しで集合のお呼びがかかるだろうという時間だった。


ロンドン郊外から来てくれた日本人ファミリーのお母さんと立ち話をしているとき、私は予定外の参加者が3名もいる(参加者の姉1名&弟1名と招待状に返事をしなかったMちゃん)ことを彼女に愚痴った。すると彼女は、英国ですでに子供のお誕生日会を催した経験を持つ日本人ママ友達に、そういうことが平気で起こるから覚悟しておくべきとアドバイスされていると言った。やはり、日本人駐在員ファミリーのママ友達ネットワークはそのような情報の共有がしっかりしている。私はア夫近辺に住む日本人ファミリーの存在を知らないし、地元の非日本人ママ友達も皆初心者ばかりなのでこのような情報に疎い。


ヨーロッパ在住歴がすでに日本在住歴を上回ってしまった私だが、だからと言ってフランスやイギリスなど長年住んだ国の風習に精通しているわけではない。特に、娘が生まれるまで子供がいなかったため、学校制度やこのようなお誕生日パーティーのしきたりはまだまだ勉強中である。パリ時代の親しい友人や同僚の中にはもちろん子持ちが数多くいたが、私に子供がいなかったためか、子供のお誕生日会の企画・運営が話題になることはなかった。ただ一度だけ、今でも親しいポルトガル系フランス人の友人が、「お誕生日会はマクドでやるのが一番手っ取り早くてウケがいい」と言っていたのを覚えている。


まったくの余談になるが、フランス人は一般的にマクドナルドのことを「マクド」と呼ぶ。これは関西で主流の短縮形と同じだ。関東の人々は「マック」と言うらしいが、関西出身の私にとってもフランス人にとっても、「マック」はマッキントッシュのことだ。私にはフランスがとても肌に合っていたのは、こういう共通性のおかげなのだろうか。


時計を見ると15時10分を過ぎていたので、私はガーデンエリアにいるゲストにそろそろ中へ入るよう促した。カフェテリアのカウンターの方へ出向くと、待ち受けていたスタッフの1人が、パーティールームに移動する案内を放送すると言った。放送と共に子供たちを整列させ、スタッフに先導されて日本式2階のパーティールームへ移動した。


本来なら、ここで皆に手を洗わせるべきであっただろう。だが、控室の荷物をかき集めたり、まだプレイエリアにいる子供や保護者に声を掛けたりで、そのような余裕はなかった。我が子だけはなんとかウェットティシューで手を拭いてやったが、他の子は各自の保護者の責任ということで対応しなかった。


パーティールームの給仕用のテーブルには、揚げたてのフライドポテトとフライドチキン、出来たてのベイクドソーセージが載った大皿やフルーツサラダが置いてあり、その横にはオレンジジュース、クランベリージュース、お水のピッチャーがあった。テーブルにはすでにディズニープリンセスの紙製のお皿とナプキンがセッティングされていたが、予定外の参加者がいたため慌てて追加セッティングしなければならなかった。


子供たちが席に着いたので給仕を始めてもらおうと思ったが、給仕テーブルの横にはこれまたかなり若そうな女性スタッフが1人ボーッと突っ立っているだけ。しかもこのスタッフはここの制服らしきスウェット姿で、2週間前のお友達のパーティー会場のようなディズニープリンセスのコスプレサービスもない。


夫と私はまず子供たちにどのドリンクが欲しいか聞いて回った。それでも女性スタッフは動こうとしない。夫と私は懐疑心に満ちた顔で目を見合わせ、周囲の人々に分からないように小声のフランス語で「これって、セルフサービスなん?」とささやき合った。私はパーティールーム内をさっと見渡したが、あの若年パーティープランナーの姿はどこにもなかった。


パーティールームの窓際に低めの長椅子が並んでおり、保護者たちはそこに座って世間話の続きを楽しんでいるようであった。夫と私がサービスの悪さに苛立ち、込み上げてくるストレスを抑えようと奮闘しているのには気づいていない様子だ。私は笑顔でドリンクを給仕して回っていたが、内心はブチ切れ寸前であった。


気の利かない女性スタッフは、夫に促されてやっと食べ物の給仕を始めたが、「出来たてでまだ熱いから」という言い訳付きだった。それを聞いた夫は、再び小声のフランス語で「なんちゅうサービスの悪さ!おちょくられてるのか?」と私の耳にささやいた。私は笑顔を引きつらせながら、「完全におちょくられてる!」と答えた。


続く