けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

魔法の絵本④

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アマゾン・ジャパンでのオーダーは、モバイルアプリを日本市場用に設定していないため、右手の人差し指1本でというわけにはいかない。もちろん、アプリの設定をアマゾンUKからアマゾン・ジャパンに切り替えればそれも可能であろうが、今の私にはアマゾンUKの方が使用頻度が断然高く、実用的だ。だから『おやすみ、ロジャー』の注文は両手の指(主に人差し指、中指、薬指)を駆使し、PCでアマゾン・ジャパンのサイトにアクセスして実行した。

 

アマゾンUKで『The Rabbit Who Wants To Fall Asleep』をオーダーした時には気が付かなかったのだが、この本には『おやすみ、エレン』という姉妹版(?)もある。レパートリーは増やした方が良いだろうからと、『おやすみ、ロジャー』と一緒に注文した。同じ著者と監訳者による「魔法のぐっすり絵本」シリーズで小ゾウが主人公。英語のタイトルは『The Little Elephant Who Wants To Fall Asleep』だから、日本語版同様にシリーズでパターン化した題のつけ方だ 。だが、アマゾン・ジャパンの商品ページに表示されている表紙のイラスト(上の画像)は、『おやすみ、ロジャー』と比べると数10倍カラフルで可愛らしい。この点が気になったので商品の説明を読んでみると、内容紹介には「ロジャーで寝た子も寝なかった子も楽しめる!3つのポイント」として、1. 日本の読者の要望により、ガラッとイラストが変わりました。「ロジャーの絵がちょっと苦手だった」という方にもおすすめです。2. ゾウのエレンが不思議の森を冒険しながら楽しい新キャラクターたちと出会う楽しい物語に。3.「心理学的効果」にもとづく眠りの手法が「ロジャーで寝ない子」向けにパワーアップ! と書かれている。やはり、ロジャーの絵に眉をひそめたのは私だけではなかったようだ。それにしても、「日本の読者の要望」で前回のイラストレーターをクビにしてしまうほどの影響力を日本市場は持っているのか。そう言えば、雑誌『ヴェリイ』のインタビュー記事で監訳者の三橋美穂さんは、翻訳版で最も売れているのは日本語版だと語っていた。

 

かくして、『おやすみ、ロジャー』と『おやすみ、エレン』は注文した2日後にお届け先に指定されている私の実家に配達された。その2日後に実家の両親が英国の私の元へ発送してくれたようだが、私の手元に届くまでには5~6日かかるであろう。果たして日本語版は、英語を「自分の言語」と決めている娘に英語版と同レベルの効力(魔力)を発揮することができるのだろうか。娘は最近、私が日本語で言ったことを「今の英語で何て意味?」と(英語で)訊いてくることが多くなった。本を読み聞かせているときも、日本語の単語や表現に関する質問が増えている。やはり日本語は100%理解できているわけではないようなので、日本語で「魔法の本」を読んでも「たった10分で、寝かしつけ!」とはいかないかもしれない。これを実験するのが楽しみだ。

 

そして「10分で熟睡絵本!」英語版の魔力を目の当たりにした翌日月曜日の夜。歯磨きを済ませて私たちのベッドに潜り込んだ(これはまた別の機会の話題)娘は、例によって「ダディの本」をリクエストした。夫は娘に添うように横たわり、『The Rabbit Who Wants To Fall Asleep』を取り出すと、いつにも増して穏やかな声で最初のページを読み始めた。娘を夫と川の字に挟むように寝そべっていた私は、さり気なく娘の表情を観察していた。すると、最初は気のせいかと思ったが、夫が掲げている本を娘はしかめっ面で見つめているではないか。しかも、夫がストーリーを読みながら(本に指定されている箇所で)娘の名前を呼びかけるたびに、娘は私の方に振り返って怒ったような顔を見せる。本の指示に従ってあくびをすると、「ふんっ!」とそっぽを向く。そして3ページ目に入ったところで、「I don’t want to be in this story!」ともの凄い形相で抗議した。それでも夫はしばらく読み続けたが、自分の名前が聞こえるたびに娘は「No!」と怒りの声をあげる。ついには手足をバタバタさせて、「I don’t like it! I HATE this story!!」と泣き出してしまった。

 

続く