けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

英国幼児お遊びグループ体験記〜教会編 ②(注:これは2016年2月に他のメディアに限定公開していた記事に手を加えたもの)

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娘のそばを離れることができないでいる私のために、W君のママがミルクティーとビスケットを持ってきてくれた。が、O君がハイハイでいろんな所へ動き回っているし、W君のオムツを替えないといけなくなったりで、彼女とゆっくりと話をすることができないまま、「おかたづけタイム」になった。常連のママたちや年長の子どもたちは、テキパキとボランティアのスタッフと一緒に片付けをしている。私は、機関車トーマスのなかまたちのひとり(1台)である紫色の機関車ロージーを手放したがらない娘の説得に悪戦苦闘していた。

気がつくと、周囲はきれいに「おかたづけ」されており、中央のお遊びコーナーに他の子供たちと保護者が集まっていた。保護者の多くはこのお遊びコーナーを取り囲むように並べられた椅子に座っていたが、中には子供と一緒に中央のカーペット上で三角座りをしている人もいた。私は娘を他の子供たちと座らせ、周囲の空いている椅子を探した。やっと見つけた空き椅子は娘の位置からかなり離れていたため、そこに座るのは諦め、娘からできるだけ近い椅子の後ろに立った。

ハンズフリーマイクを右の耳に着用した仕切り役の女性が、「ミュージックタイム」を告げた。すると数名のボランティアが子供たちにプラスチックのマラカスを配り始め、常連の子供たちが飛びついた。そしてロック調の音楽がスピーカーから流れ出し、子供たちはマラカスを振ったり、踊ったりし始めた。W君もマラカスと一緒に腰を振ってツイストを踊り、すっかりノリノリだ。娘は突然の集団ロックダンスに圧倒されたのか、「Mummy、オカアサン、Cuddle(抱っこ)!」と泣き出してしまった。

椅子の壁をまたいで娘の所へ行き、抱っこしてやると、娘は泣き止んだが、不安そうに左手の親指を吸いながら、躍り狂う子供たちを観察していた。隣にいた誰かのママが娘にマラカスを渡してくれたが、娘は「No Thank You」と断った。我が子ながら、礼儀正しい。

ロックダンスの次は童謡だった。『If you are happy and you know it』 ーすなわち、『幸せなら手をたたこう』だ。娘は英語版も日本語版も知っているが、先ほどの集団ロックダンスによほど圧倒されたのか、私が日本語で歌って「あなたも歌えるよね!」と言っても、首を激しく横に振るだけで歌わなかった。その次もまた童謡だったが、これは私の知らないものだった。

「では、おまちかねのお話タイムですよ!」と仕切り役の女性(おそらく50歳は過ぎている)がマイクで叫ぶと、子供たちが嬉しそうに歓声をあげた。「わあ、どんなお話か楽しみだね!」と語りかけると、さっきまで不安そうにしていた娘は首を縦に振って同意した。

「じゃあ、テディを呼びましょう!」と言って、仕切り役の女性は布が掛けられたテーブルで隠されている自分の足元からクマのぬいぐるみを出してきた。同時に、数名のボランティアが、吸い口が付いた清潔なプラスチック製のカップとビスケットを子供たちに配り始めた。飲み物は水かアップルジュースかを選択できる。娘は水を選び、ビスケットを1枚受け取ると、ボランティアの女性に「Thank You」と言った。お利口さんだ。それにしても、なんとも至れり尽くせりのサービスだろう。

感心しながら再び仕切り役の女性の方をよく見ると、彼女の右後ろには腕人形用の舞台が設けられている。「お話タイム」は人形劇式のようだ。飲み物とビスケットの配給が終わったところで、「今度はテディと一緒に、みんなでいっせいにスペシャルなお友達を呼びましょう!」と仕切り役が吠えた。その後に子供たちが叫んだ名前は、一瞬聞き間違えかと耳を疑った。舞台にはまだ、クマのぬいぐるみを抱えた仕切り役の女性しか見えない。「あれっ?どうしたのかな?出てこないね。もう一度、大きな声で呼びましょう!」という彼女の声に続いて子供たちが叫ぶ。

「ミスター・バイブル〜っ!」

続く