けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

古人の戒め〜その⑤

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DIY Disasterの後始末をさらにDIYで済ませ、どこまでも安上がりを追及する私。その④ですでに言及しているが、ここまでの出費額を再びおさらいすると、

 

  1. DIYバレイヤージュキット ----- 7.99英ポンド
  2. 修正のためのセルヘアカラーキット ----- 6英ポンド

  合計              13.99英ポンド(約2100円)

 

だから、ヘアサロンでバレイヤージュをやってもらったときの想定額120英ポンド(約18000円)よりも106.01英ポンド(120英ポンドと13.99英ポンドの日本円換算額から単純に計算して約15900円)も「得」している。後日になって、セルフカラー塗布で使用したバスルームの数ヵ所に染髪剤の残骸が次々と発見され、夫と娘からヒンシュクを買ったが、私は結果に満足していた。

 

ところが、DIY Disasterの後始末から数週間後、毛先が異様にパサパサし、枝毛の数と甚だしい髪の裂け方が気になりだした。やはり、ごく短い期間に髪の脱色と染色を繰り返したツケで髪に多大な負担がかかり、かなり痛めてしまったようだ。ひっつめ髪にしても上手くまとまらないし、そのまま超ロングで下ろしているとボサボサでだらしなく見える。そこで、いつも買い物をしている近所のスーパーで、ロレアルのElvive Full Restore 5 Intensive Repairing Masqueを4.75英ポンド(約700円)で購入した。パッケージの類似性から判断して、このシリーズは日本市場で「エルセーヴ  ダメージケアPROEX」として販売されているようだが、私が買ったヘアマスクに相当するものは日本ロレアルのホームページに見当たらない。

 

シャンプーするたびにこのヘアマスクを使っていたが、髪のパサパサ・ボサボサ感は改善されない。あまりにもみすぼらしく見える自分の頭髪に私は嫌気が刺してきた。ここはやはり毛先を揃え、レイヤーを入れて髪に活き活き感を与えるべきであろう。だが、さすがにこのような高度な技はセルフでは無理だ。そこで、毎週火曜日の朝に通っているズンバ教室会場の近くに見つけたこじんまりとしたヘアサロンでカットを予約することにした。

 

私はヘアサロンに関しては浮気性の傾向がある。14年間暮らしたパリでも、「行きつけ」と呼べるレベルのサロンはほぼなかった。その時その時の気分と予算、交通の便に応じ、数店舗を転々としていたからだ。パリ生活最後の2年間は、自宅から徒歩2分のヘアサロンを優先的に選んでいたが、その頃からずっとロングヘアであったため、行く回数は1年に2回程度で、足しげく通うことはなかった。

 

英国に移住してからは、夫が薦めるヘアサロンに行くことが多かった。最初に行ったのは夫の仕事場の近くにある非チェーン系の洒落た店で、これまた夫の薦めで指名していた女性の美容師は、仏語圏出身のスイス人だった。彼女となら希望するカットを仏語で説明できるのが、当時の私には便利であった。だがそこも、夫がヘアサロンを変えたのをきっかけに行かなくなってしまい、以来様々なサロンを渡り歩いた。日本に里帰りした時に、実家の近くや東京の滞在先の近くのサロンに行くこともあったが、やはり基本的にロングヘアをキープしていたため、ヘアサロンを利用する頻度は概して低かった。

 

今回初めてトライしたこのサロンはかなり小さ目で、50代前半とおぼしき女性が独りできりもりしていた。女性というより、「おばちゃん」という描写のほうが似合う感じの美容師だ。ダイレクターやアーティスト、シニアスタイリストなどの役職名を掲げたスタイリッシュな美容師陣が常駐するヘアサロンが主流の今にあって、どことなく日本の昭和的なこのサロンに、昭和育ちの私は何とも言えないノスタルジーと新鮮味を覚えた。かえってこういうところの方が、きめ細かいケアやアドバイスをしてくれるのかもしれない。

 

予約の当日、ヘアサロンに赴くと、おばちゃん美容師は受付で電話に応答していた。私の姿を見ると、受話器を手で押さえて「ちょっと待って」と小声で言い、再び電話での会話に戻った。サロン内には彼女と私以外誰もいない。さり気なく陳列品にチェックを入れると、どれもロレアルのヘアサロン専用製品だった。ということは、ここで使っているシャンプーもトリートメントもロレアル製品なのだろう。自宅で使っているのは市販ブランドだがロレアルものなので、一貫性があっていいかもしれない。そんな考えを巡らせていると、通話を終えたおばちゃん美容師が私のジャケットを預り、ケープを着せかけてくれた。

 

シャンプーを終えて座席に誘導され、どのようなカットを希望するのかを尋ねられたので、毛先を5cm程度(どこのサロンでも指定より短くカットされるので、10cmぐらい切られることを想定して5cmと指定)カットして揃え、サイドとバックにレイヤーを入れてスタイルに動きを与えて欲しいと説明した。すると、濡れた私の髪を梳かしながら数セクションに分けてクリップで留めていたおばちゃんの手が一瞬止まった。正面のミラーに映っているおばちゃんの様子をうかがうと、私の髪の表面部を持ち上げたり下ろしてかき分けたりしながら不可解そうな表情をしていた。やはりバレたか、DIY Disaster。

 

恥を忍んで正直に事情を説明すると、大笑いされてしまった。おばちゃん美容師は手鏡で私の後頭部を映し出し、私のDIY Disasterセルフ修正がいかに不完全であるかを視覚的に説明してくれた。自分ではカバーできたと思っていたキンキンのブチは、かなり明るめのレッドになっており、他の部分から浮き出ている。しかもそのブチは不規則な幅と長さで後頭部の数ヵ所に見られる。ひっつめ髪ならある程度隠すことができるが、髪を下ろしていたときの私の後頭部はさぞかし滑稽だったことだろう。それを他人から面と向かって指摘されたことはなかったが、実は陰で笑われていたのかもしれない。

 

おばちゃん美容師は、毛先のダメージはカットである程度改善できるが、DIY Disasterセルフ修正の不完全さはカットでカバーできるものではないと断言した。ちゃんとプロの手で丹念に染め直してもらうしかないのだ。

 

この日のシャンプー+高級トリートメント(かなり髪が傷んでいたのでやっておくべきと強く勧められた)&カット&ブロードライにかかった費用は87英ポンド(約13000円)。つまり、DIYバレイヤージュキット購入から合計105.74英ポンドの出費になる(4.75英ポンドのヘアマスクも計算に入れている)。最初からプロにバレイヤージュをしてもらった場合の想定額120英ポンドとの差額は、ほんの14.26英ポンド(約2100円)程度になってしまった。そして近いうちに、プロによるヘアカラーでDIY Disasterを綺麗に修正してもらわなければならないだろうから、この14.26英ポンドの節約は完全におチャラになる。金だけの問題ではない。これまでに費やした労力も馬鹿にならない。DIYバレイヤージュキットはネットで注文したが、その修正のためのセルフヘアカラーキットはわざわざそれだけのために買い物に出かけた。そして2度にわたる自宅での塗布作業と清掃作業(念入りにやったつもりが、見逃した染髪剤のしずくが次々と発見され、さらなる清掃作業に)。さらにダメージカバーのためのヘアサロン予約と予約当日の移動。

 

この時点で、私は自分のセコいやり方の愚かさをじわじわと感じ始めたのだった。。。

 

続く