けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑩ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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写真は子供に対応する海賊夫。左胸には名札スティッカー

 

先述のように、私たちは参加する子供たちの顔と名前は知っているが、彼らの保護者はあまり面識がない。そこでこの日の2週間以上前から、子供たちを連れ来る保護者に名前を書き込む名札スティッカーを配布する計画を立てていた。


これは事前にしっかり準備しており、必要な小道具はアマゾンプライムで注文してパーティーの1週間前には全て揃っていた。これらの小道具を参加者リストと共に受付のお兄さんに渡し、名札スティッカーに自分たちの名前を記入して胸につけるよう保護者にお願いしてくれと頼んだ。


時計を見ると、もう13:50であった。夫と娘を駐車場に呼びに行き、入場してから親娘3人控え室で待機した。一番最初に到着したゲストは、娘の仲良し3人組の1人であった。この子のお母さんとは何度も立ち話をしたことがあるし、名前も知っている。だが夫は2週間前のパーティーで顔を合わせただけであったので、名札スティッカーが大いに役立った。


次に到着した子のお母さんは、夫も私も初対面であった。子供たちは早速靴を脱いで控え室に用意されていたプラスチック製のバスケットに入れ、巨大ジャングルジムへ繰り出して行った。ロンドンの日本人ファミリーも無事到着。こうして次から次へとゲストが到着し、この保護者用名札スティッカーがいかに良策であったが誰の目にも明らかになった。


ある程度の人数が揃ったところで、海賊船船長の帽子にアイパッチ姿の夫は保護者にホットドリンクの希望を訊いて回り、カフェテリアのカウンターにオーダーしに行った。


しばらくして、娘の仲良し3人組のもう1人がお父さんと到着した。よく見ると、この子より5歳ぐらい年上のお姉ちゃんも一緒に来ている。一瞬「へ?」と思ったが、ファミリーを笑顔で迎え入れ、来てくれたお礼を述べた。この子のお父さんとは何度か顔を合わせたことがあるが名前は知らなかったので、ここでも名札スティッカーは非常に役立った。


カフェテリアに追加ドリンクをオーダーしに行っていた夫にこの子のお姉ちゃんのことを小声で伝えると、それは解決済みだとの返事が返って来た。ファミリーが到着した時に受付近くにいた夫が迎え入れ、お父さんから事情の説明を受けたそうだ。奥さんが仕事に出てしまっているため、上の子を1人で留守番させるわけには行かず連れて来たと。ここの入場料は子供1人につきで、付き添いの保護者は無料である。保護者から入場料を取らずとも、彼らは大抵の場合、子供たちを遊ばせている間にカフェテリアコーナーでお茶するので飲食料金で稼げるのだ。良心的というより、計算済みの商法であろう。 この子のお父さんは、夫が何も言わなくても上の子の入場料を払ったそうだ。


保護者ホットドリンクサービスは大ウケだった。名札スティッカーの効果も抜群で、控え室には和気あいあいとした雰囲気が漂っていた。だが控え室はスペースが限られており、椅子が数脚あるだけでテーブルがないため、巨大ジャングルジムの向かいのカフェテリアコーナーのテーブル席で世間話をしている保護者もいた。


ロンドン方面から来る私たちの友人とその2歳の息子からは、渋滞で30分ぐらい遅れそうだと連絡があった。一方で、会場の近辺に住む参加者の保護者たちは、渋滞はそれほどではなかったと口を揃えて言った。それでも私の警告メッセージは評判が良かった。


控え室にいた保護者たちと話しをしていると、受付スタッフが「ちょっといいですか?」と私を探しに来た。何事かと思っていると、参加者リストに名前がないゲストが受付に来ていると言う。娘のパーティーの招待状を持っているが、どうするべきかと私の指示を求めて来た。


招待状を出してからこの日まで、返事が一切なかった子(保護者の責任だが)は2人いた。自宅でするパーティーとは違い、こういう会場では最終参加者数を数日前にコンファームしなければならない。招待状に返事の締切日を書いておくべきであったのかもしれないが、私はそれぞれのマナーの常識を信じることにし、RSVPに締切日を追加記入しなかった。


「返事をしない」=「参加しない」と決めつけていたが、まさか当日にそのうちの1人がやって来るとは!受付に行くと、心配そうな顔をした娘のお友達が、何が起こっているのかイマイチ理解出来ていない様子のお父さんと立っていた。


私はお父さんに挨拶をすると、返事がなかったので来れないものと思っていたとフレンドリーな笑顔で言った。するとその子お父さんはバツの悪そうな表情で、今朝突然に奥さんから招待状とラッピングされたプレゼントを渡され、この子をパーティーに連れて行くように頼まれたのだと説明し、返事をしていなかったとは知らなかった、申し訳ないと謝った。


お父さんは確かに無実に見えたし、何故中に入れてもらえないのか理解出来ないこの子は今にも泣き出しそうな顔をしている。この子に罪はない。全く問題はないので中へどうぞ、よく来てくれました!と言い、私は聖母のような慈悲に満ちた笑顔で2人を迎え入れた。


続く