けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑦ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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*写真は例の着古しソフィアドレス。この写真ではわかりにくいが、あちこち引き裂かれていて、染みや絵具もそこら中についている。2年前の誕生日プレゼントだった一品で、丈もずいぶんと短くなった

 

 

翌日になっても会場からケーキの連絡はなかった。この日は娘の誕生日だったので、私は公約を果たすために朝からキッチンでせわしなく作業をしていた。娘の4歳の誕生日〜ケーキ編で描写したように、ハプニング連発のストレスに満ちた半日であったため、こちらから電話をかけて確認する余裕はなかった。

 

万が一、パーティーのために再びケーキを自分で作るということになれば、この日のてんてこ舞いの体験はリハーサルであったと言えるかもしれない。だがやはり、あのレベルが高かった娘のお友達のパーティーで、これまたレベルの高い「お母さん手作りバースデーケーキ」を目撃してしまった私には、娘の晴れ舞台でみすぼらしい自家製ケーキを振る舞う勇気はなかった。

 

なぜだか覚えていないのだが、その翌日も会場との連絡は取れなかった。確認できたのはなんと、パーティー前日。ぎりぎりセーフで土曜日のケーキはOKとの朗報に、私は胸をなでおろした。「ディズニープリンセステーマのケーキですよね!」と念を押して受話器を置くと、早速この吉報をグラスゴーに出張中の夫にテキストメッセージで伝えた。このテキストメッセージは今でもスマホのメモリに残してあるが、その時の私の安堵と驚喜ぶりはメッセージに挿入された絵文字の種類と数が物語っている。

 

ケーキの問題は解決したので、私はパーティーバッグの最終確認をした。参加者数より少し多めに用意したつもりであったが、パーティーの10日前に参加をコンファームした子とその子の妹の分を数えるともうスペアがない状態になっていた。まあ人数分あるのだから大丈夫だろうと高を括り、追加注文はしていなかった。

 

そしてパーティーの当日の朝。普段より早く目を覚ました娘は、興奮気味で私たちを起こしに来た。「ねえねえ、今日は私のパーティーの日?」(注:英語)と目を輝かせて訊いてくる娘に「そうだよ!」(注:日本語)と答えると、「わ~~い!すっごいエキサイティング!」(英語)と大はしゃぎ。私たちのベッドの上で数回飛び跳ねると、自分の部屋へ飛んで行った。洋服ダンスを開ける音が聞こえてきたので様子を見に行くと、使い古してボロボロになった『ちいさなプリンセス ソフィア』のドレスを着ようとしているではないか。

 

「Aちゃん、それはもうボロボロだし、背が伸びて丈が短くなったから、違うドレス着ようよ。新しいソフィアのドレス、前に買ってあげたでしょ!」と私が日本語と諭すと、娘は「やだあ!」と日本語で答えてから、「こっちがいい!新しいのはまだ私には丈が長すぎるもん」と英語で反論した。しかし、こんなボロボロのみすぼらしいコスプレドレスでは、まるで魔法使いのおばあさんに出会う前のシンデレラではないか。お誕生日パーティーにこんな着古しのドレスを着せるなんて、なんてひどい親だと品格を疑われかねない。私は必死に娘を説得しようとしたが、本人は全く聞く耳なし。頑固なのは私譲りなのだろうか。

 

お手上げ状態で夫に助けを求めると、「今は好きなようにさせたら?会場に行く直前に着替えさせたらいいじゃん」と悟りに満ちた態度で返事をされた。そう言われてみればそうなのだが、私は数日前からこの日の娘の衣装を計画していた。数週間前までは、お誕生日パーティー用に晴れ着というか、可愛いパーティードレスを買ってやろうかなと考えていた。しかし、会場が屋内遊び場であり、子供たちは汗だくになるまで目一杯はしゃいで遊びまくるであろうから、それは適切ではないと判断した。

 

そこで私が勝手に決めた衣装は、一年前に近所のスーパーで見つけた『塔の上のラプンツェル』のドレス。これはコスプレドレスというよりは普段着っぽい一品で、スカート部分にチュールがあしらわれており、これが巨大滑り台で大当たりなのだ。これを着て滑り台を降りるともの凄くスピードが出るため、娘は屋内遊び場に行くときには喜んで着ている。かなり使い込んでいるが、まだまだ上々のコンディションだ。ジャングルジムをよじ登ってパンティが丸見えになってはいけないので、パーティーの1週間前に同色系のレギングを買った。ドレスそのものはライラック色(薄紫)であるため、コントラストを演出するダークパープルのレギングを選んでいた。その時には助太刀するからという夫の助言に従い、家を出る直前にこの衣装一式に着替えさせることにした。

 

続く