けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

水の質①(注:他のメディアに限定公開していた記事に手を加えたもの)

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*写真はライムスケールがこびり付いた我が家の電気ケトル


実は、昨日2月22日水曜日から、硬水軟化装置(軟水器)の3ヵ月間無料トライアルをしている。昨日正午にこの軟水器メーカーの配管工がやって来て、約2時間かけて我が家の水道の元栓に軟水器を取り付けてくれた。軟水器そのものは比較的シンプルな構造だが、それを設置するには水道管をあちこちいじらないといけない。その工事に2時間ちかくかかったのだ。だが、いったん設置すればあとはごく簡単。3~4週間に一度ぐらいのペースで、軟水器の中に入れるブロック状の塩を補給するだけ。電動ではなく、水流で稼働するタイプなので、電気代がかさむ心配もない。


アスコットの今の家(貸家)に移り住んだのは8年前のこと。それがなぜ、今になって初めて軟水器を使ってみる気になったのか。

 

事の始まりは今月のあたま。この軟水器メーカーの訪問販売員が我が家のドアベルを鳴らしたことだった。30代後半とおぼしきアジア系の物腰の柔らかい男性で、「押し売り」のイメージとは程遠い人物だった。ちなみに、英国でいう「アジア系」とは、日本人や中国、韓国人などのいわゆる東洋人ではなく、インド、パキスタンバングラデシュ系の人々のことを指す。


普段なら訪問販売はすぐに断っている(あくまでも礼儀正しく)が、この人物の印象が良かったことと(結構人情深い私)、硬水と軟水の違いに多少興味があったので、話を聞いてみることにした。

 

英国の水道水は大半が硬水であることは知っていたが(ちなみにスコットランドは軟水)、「紅茶は硬水で淹れた方が美味しい」だとか、硬水は浴室の鏡やガラス、シャワーヘッドや蛇口、キッチンの流し台や電気ケトルやアイロンに堆積する石灰鱗(ライムスケール)の原因だという程度の知識しかなかった。それがこの販売員の説明では、硬水は皮膚の乾燥や髪のパサつきの原因でもあり、その対策やライムスケールの除去のために多くの人が気が付かないうちにかなりの出費をしているという。しかも、我が家があるアスコット周辺は、水道水の硬度が特に高い地域だそうだ。

 

確かに、シャワールームや浴室、キッチン流し台の掃除には、ライムスケール除去用の少し高めのクレンザーを使っている。しかも、かなりゴシゴシとこすらなければきれいにならない。そして食器洗い機や洗濯機には、定期的に専用の塩を投入しなければ故障につながる恐れもある。電気ケトルも確かに底や注ぎ口にまでライムスケールがかなり溜まっているし、アイロンもスチームと一緒に灰色のライムスケールが溶け出して、アイロンがけしていた服を汚してしまうという事態が何度かあった。


硬水が皮膚や髪の乾燥の原因であることは、そういえばどこかで聞いたような気がする。数年前、ウィンザーのネイルサロンで初めてケアをしてもらったとき、ベトナム系のネイリストの女性に、「あなたのキューティクルはかなり乾燥してますね。イングランドの水はよくないから、キューティクルオイルを頻繁に使ったほうがいいですよ」と言われたことがあった。実際、手を洗うごとにハンドクリームをしっかり塗りこまないと、手の表面がカサカサしたり突っ張ったりする。

 

髪に関しても、イギリスに移住してからというもの、結構なお値段のコンディショナーを使ってもシャンプー後の洗い上がりの質感が満足のいくものではないのは事実。髪を洗った後は(もちろんコンディショナーも毎回使っている)、ヘアセラムやモロッコで買ったアルガンオイルをしっかり塗らないとヘアブラシがすっと通らない。そしてドライヤーで乾かしたあとの髪は、ゴワついたり縮れたりして、なかなかきれいにまとまらない。だからシャンプーしてキレイな髪になったはずの日も、髪をねじり上げて後頭部にバレッタで留めるというパターンが多かった。

 

ヘアサロンで買えるロレアル系の高級ヘアケア商品ブランド「ケラスターゼ」のシャンプーとコンディショナーをしばらく使っていた時期があったが、これはさすがにヘアケアのホームエステというコンセプトを売り物にしているブランドだけあって、素晴らしい艶とコシの感動的な仕上がりだった。ただやはりかなりのお値段の代物なので、ネット販売などの割安ルートで入手していたが、結局1年半ぐらいで断念した。以来さまざまな商品を試したが、「ケラスターゼ」に肩を並べるものはなかった。


しかし、この販売員の説明を玄関先で聞くまで、この髪の悩みを水道水の質と結び付けたことはなかった。歳をとったせいで髪に栄養分が行き渡りにくくなったためだとか、出産で体質が変わってしまったから(とはいっても、出産前から抱えていた悩み)だとか思い込んでいた。

 

だがよく考えてみれば、1月に日本に里帰りしていた期間は、シャンプー後の髪の質感はあのケラスターゼの仕上がりに近いものだった。使っていたシャンプーとコンディショナーの質が良いからかと思っていたが、実家で使っていたのはごくありきたりの商品だっただろうし、東京の民泊先に置いてあったのは某コンビニの自社ブランド製品だった。ああ、なるほど!日本の水道水は軟水だからだったのか!

 

続く