けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

魔法の絵本②

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我が娘は4歳児にしては就寝時間が遅い。もっと小さい頃からそうだった。それは親である私たちの責任なのだろうが、夜の9時前に寝入ることは非常に珍しい。8時30分ぐらいにベットに入っても、本を数冊読んで聞かせないと寝つかない。何度もベッドに入れる時間を早めようと試みたが、成功したためしがほとんどない。いつもなんだかんだと理由をつけて起きている。大抵の場合、まず夫が英語の本を読んで聞かせる。そしていつも最低でも2冊は読まないと納得しない。その後、「もうネンネしなさい」と言っても、「今度はオカアサンの本!」とねだる(「オカアサン」だけ日本語)。しぶしぶ日本語の本を読んで聞かせるが、私も2~3冊読む羽目になることもある。「ダディの本が1冊、オカアサンの本が1冊」とルールを決めても、「ヤダ!」(これは日本語で言える)とグズって眠ろうとしない。だが、3冊ぐらい読んで納得すると、すぐにスヤスヤと寝入る。相当疲れ果てている時以外はこのパターン。だからこの日の夜も、夫は英語の本を2冊読んで聞かせた。しかし、夫が選んだ2冊目も、『The Rabbit Who Wants to Fall Asleep』ではなかった。

 

何ゆえに夫はあの絵本を選ばないのか。効果抜群と高い評価を受けていることはちゃんと教え込んだはず。不可解な夫の選択に苛立ちを感じたが、ベッドタイムの娘の目の前で言い争いをするわけにはいかない。そこで黙って見守ることにした。案の定、娘は2冊目の英語の本が終わった後、私に日本語の本を読んでくれとねだり出した。「もう遅いからダメ」と言っても納得しない。結局、「本当に本当の最後の1冊」と約束させて、短めの日本語の本を読んで聞かせた。読み終わった後、娘は約束どおり目を瞑り、しばらくするとスヤスヤと寝息をたてて眠り始めた。ベッドに入ってから寝入るまでの経過時間は約30分、いや、もっと経っていたかもしれない。

 

なぜ『The Rabbit Who Wants to Fall Asleep』を読んで聞かせなかったのかを夫に問い正したくてたまらなかったが、出張から戻ったばかりで疲れているだろうと気を遣い、その夜はぐっと堪えることにした。そして翌日土曜日の夜。今度こそはと期待を膨らませていたが、夫はまたしても別の本を選んだ。私は内心半ギレ状態だったが、夫が2冊目にどの本を選ぶかを見極めてから抗議することにした。そして2冊目も別の本。再び夫に期待を裏切られて怒った私はついに、『The Rabbit Who Wants to Fall Asleep』を夫の目の前に突きつけ、「なんでコレ読まないの!」と爆発した。すると夫は、「この本にはテキストが多すぎる!読むのがうっとおしい!」と反論した。私はムカッときて、「そんなことない!これは幼児用の絵本なんだから!」と言いながらページをめくってみた。すると確かに、見開きページの右側はテキストがぎっしり詰まっている。次のページも、その次のページもそうだ。左側のページには、子供の絵本の絵というよりも小説の挿絵に近い、どちらかと言うとシンプルであまり可愛いとは言えない絵が描かれている。使われている色も、最高でも4色ぐらいしかない。確かに、読み手へのアピール度は低い。だから夫はこの本を敬遠していたのだ。

 

夫がこの本を避けていた理由は分かったが、せっかく購入したのだから試さずにいる訳にはいかない。雑誌『ヴェリイ』掲載の三橋美穂さんのインタビューで読んだこの本の秘密を延々と説明し、なんとか翌日の日曜日の夜こそは試してみることに対する夫の合意を得ることに成功した。

 

続く