けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

娘の4歳の誕生日~ケーキ編④(これは、今年の5月に他のメディアに限定公開していた投稿に手を加えた記事)

とにかく出来た。これで娘とのお約束も、保育園に対する公約も果たせる。ストレスバンバンの朝であったが、重大な任務の一部を達成した満足感に浸りつつ、ケーキを冷蔵庫の中に入れた。これから30分間ほどエクササイズをし、シャワーを浴びてメイクをしたら、軽くランチを済ませてケーキを保育園に配達しよう。身支度をしてからケーキを冷蔵庫から取り出す。我が家には、ちょうどいい大きさのガラスの蓋つきチーズボードがある。これは、数年前に夫の上の娘2人(そう、私は継母でもある!)がクリスマスにプレゼントしてくれたものだ。これはケーキの配達に役立ちそうだ。ケーキを置いてみると、本当にぴったりのサイズであった。だが、これも慣れている人なら、最初からケーキを運ぶための箱を用意しているだろう。ちょっとチーズ臭い気がしたが、まあいいだろう。これを自分の車で配達する訳だが、座席上でしっかり固定させないと、急ブレーキを踏んだら大変なことになる。まずは、玄関のドアを開け、車のドアも大きく開けてから、ケーキの入ったチーズボードを運ばなければならない。ボードを抱えながらドアを開けようとすれば、とんでもないアクシデントが発生しかねない。慎重に動いたため、ケーキを車の中に運ぶ作業は無事クリアできた。

 

次にケーキを助手席に固定する。このガラスの蓋つきチーズボードは本当に役に立った。写真のように、シートベルトでガラスの蓋を固定した。これから安全運転でいざ、娘の保育園へ!

 

保育園に着くと、先生たちがケーキを見て感嘆の声をあげてくれた。
「Wow, it looks gorgeous! Looks beautiful and yummy!」などの(少し大げさな)誉め言葉をいただいた。単なるお世辞かもしれないが、そう言われるとやはり嬉しくなる単純な私。子供たちはまだ私とケーキに気が付いていない。園長先生の事務所にそっと忍び込むと、娘のクラス担当の先生が、「4」の形をしたロウソクにマッチで火をつけてくれた。その間にもう1人の先生が子供たちを集め、「今日は誰のお誕生日か知ってますか?娘の4歳のお誕生日です。みんなでHappy Birthdayを歌いましょう!」と呼びかけた。子供たちが娘のために『Happy Birthday』を歌い始めたので、私は事務所からケーキを持って子供たちのほうへ進んだ。

 

今日はお誕生日なので特別に白雪姫のコスプレ姿で保育園に来ていた娘は、他の子供たちに取り囲まれて照れくさそうに立っていた。私が運んできたケーキを見ると、子供たちは一斉に歓声を上げた。嬉しそうに飛び跳ねている子もいる。なんて無垢なんだろう。娘は「Mummy! オカアサン!You really really made it!」と目を輝かせて喜んでくれた。あー、やっぱり頑張ってバースデーケーキを作ってよかった!

『Happy Birthday』を歌い終えると、英国ではたいてい「Hip hip, Hooray!」と3回喝采を送る。興味のある人はこちらを参照:https://ja.wikipedia.org/…/%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%97%E3%8…

喝采を受けた娘は、照れながらロウソクの火を吹き消すタスクにとりかかった。ところが、緊張していたのかうまく吹き消すことができず、私に助けを求めてきた。母子一緒に揃って吹くと炎は消えた。

 

子供たちは今すぐケーキを食べたいと言い出したが、まだおやつの時間ではなかったのでしばらくお預けということになった。私は仕事が残っているのですぐ家路についた。助手席に乗せた空のチーズボードを見て、何とも言えない達成感を覚えた。

 

その日、娘をお迎えに行ったのはロンドンからちょうどいい時間に帰ってきた夫。彼の話によると、ケーキは大好評だったとかで、ひとかけらも残っていなかったそうだ。先生たちも食べたらしく、とても美味しかったとのこと。ゴムベラについていたスポンジの生地や、ボウルに残っていたホイップクリームはちょっと舐めて味見していたが、ケーキそのものは食べていないので少し不安であった。まあ、本の分量通りの材料で作ればよっぽどのことがない限り、「不味い」ものにはならないと思うが、スポンジの上半分が板のように硬かったのではないかと心配していた。だが、みんな心から感心してたと夫が言うので、大丈夫だったのだろう。安堵した。

 

では、ご当人の娘の判定は?「お母さんが作ったケーキ、美味しかった?」と尋ねると、「うん。But I didn’t like the cream…」と顔をしかめた。どうやら、ホイップクリームを残してスポンジとイチゴだけ食べたらしい。うーむ。。。人工着色料が大量に使われていそうなアイシングで覆われた市販のケーキなら、このアイシングの部分しか食べない娘。そんな彼女がスポンジとイチゴだけ食べたということは、ケーキの核心は上出来だったということだろうか。そういうことにしておこう。

 

というわけで、なんとかMission Accomplished! しかし、強烈なストレスに見舞われた半日だった。たかがバースデーケーキ作りで心身ともにここまで疲労するとは。。。
慣れないことをするなら、やはり数日前にリハーサルしておくべきであろう。教訓。