けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

英国幼児お遊びグループ体験記〜教会編 ④ ー完結(注:これは2016年2月に他のメディアに限定公開していた記事に手を加えたもの)

10歳ぐらいのときのことだった。当時の小学校では、担任の先生がほぼすべての科目を教えていた。夫少年の担任は、ミス・マクドナルドという中年の独身女性だった。ある日、地理の授業で恐竜の化石について学び、それらが1億年も昔のものであることに興味をかき立てられた。その翌日に宗教の授業があり、同じミス・マクドナルドから創世記の話を聞かされた。エデンの園のアダムとイブ。ノアの箱船と大洪水。前日の地理の授業で感じたときめきから醒めていない夫少年は、とんでもない矛盾を感じた。アダムとイブの話は恐竜の化石とつじつまが合わない。たまりかねて手を挙げ、先生に質問した。「昨日の地理の授業で習ったことと全然違います。どうしてですか?」

この純粋で率直な学童の質問に対し、熱心なプレスビテリアンプロテスタントの中でも戒律が厳しいことで名高い)のミス・マクドナルドは、氷のように冷たい視線と体罰で応えたのだ。夫少年は教壇に呼び出され、教卓の上に両手を広げるように命令された。先生は、夫少年の幼い手を木製の定規で数十回強く叩いた。夫の手は腫れあがり、傷ができてしまった。今の英国では警察沙汰間違いなしの行為である。手の傷は数週間後に治ったが、夫少年の心の傷は半世紀を経た今でも癒されていない。この日、夫は心の中で宗教にバツ印をつけたそうだ。

そんな夫にこのお遊びグループの話をすると、「それは宗教的洗脳だ!こんな幼い子供たちを相手にけしからん!」と憤慨した。私はあの「お話タイム」はお笑いで済ませるつもりでいたが、夫は本気で怒っている。もう成人している彼の上の娘2人(彼もバツイチで、彼女たちは先妻との子供)は、小学校から高校まで教会付属の私立学校に通っていたが、このような学校では、食事の前にお祈りをさせられたり、クリスマス前にお遊戯会でキリスト生誕劇を演じさせられることはあっても、このような「洗脳的」な授業や説教は一切なかったという。しかも、他の宗教についても、できるだけバランスのとれた教育をしていたそうだ。そうでなければ通わせていなかったと。

2年前、娘を保育園に通わせるようになるまでの数ヵ月間、近所の別の教会で週1回の乳幼児向けお遊びグループに参加していたが、このような宗教的な要素は一切なかった。確かに、今回のお遊びグループは、「お話タイム」から非常に居心地が悪かった。夫ほどの憤りは感じなかったが、かなりの違和感を抱いたのは事実。ただ、それ以外のサービスはなかなか良かったし、娘が仲良しのW君も通っているし、どうしたものか。「お話タイム」が始まる前に、おかたづけだけ手伝って、こっそり抜け出せばいいかなと思ったりしていた。

だが、今週の火曜日は、特に行けない理由があった訳ではなかったが、娘を連れて行かなかった・・・