けりかの草子

ヨーロッパ在住歴24年、現在英国在住のバツイチ中年女がしたためる、語学、社会問題、子育て、自己発見、飲み食いレポートなど、よろずテーマの書きなぐり。

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑩ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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写真は子供に対応する海賊夫。左胸には名札スティッカー

 

先述のように、私たちは参加する子供たちの顔と名前は知っているが、彼らの保護者はあまり面識がない。そこでこの日の2週間以上前から、子供たちを連れ来る保護者に名前を書き込む名札スティッカーを配布する計画を立てていた。


これは事前にしっかり準備しており、必要な小道具はアマゾンプライムで注文してパーティーの1週間前には全て揃っていた。これらの小道具を参加者リストと共に受付のお兄さんに渡し、名札スティッカーに自分たちの名前を記入して胸につけるよう保護者にお願いしてくれと頼んだ。


時計を見ると、もう13:50であった。夫と娘を駐車場に呼びに行き、入場してから親娘3人控え室で待機した。一番最初に到着したゲストは、娘の仲良し3人組の1人であった。この子のお母さんとは何度も立ち話をしたことがあるし、名前も知っている。だが夫は2週間前のパーティーで顔を合わせただけであったので、名札スティッカーが大いに役立った。


次に到着した子のお母さんは、夫も私も初対面であった。子供たちは早速靴を脱いで控え室に用意されていたプラスチック製のバスケットに入れ、巨大ジャングルジムへ繰り出して行った。ロンドンの日本人ファミリーも無事到着。こうして次から次へとゲストが到着し、この保護者用名札スティッカーがいかに良策であったが誰の目にも明らかになった。


ある程度の人数が揃ったところで、海賊船船長の帽子にアイパッチ姿の夫は保護者にホットドリンクの希望を訊いて回り、カフェテリアのカウンターにオーダーしに行った。


しばらくして、娘の仲良し3人組のもう1人がお父さんと到着した。よく見ると、この子より5歳ぐらい年上のお姉ちゃんも一緒に来ている。一瞬「へ?」と思ったが、ファミリーを笑顔で迎え入れ、来てくれたお礼を述べた。この子のお父さんとは何度か顔を合わせたことがあるが名前は知らなかったので、ここでも名札スティッカーは非常に役立った。


カフェテリアに追加ドリンクをオーダーしに行っていた夫にこの子のお姉ちゃんのことを小声で伝えると、それは解決済みだとの返事が返って来た。ファミリーが到着した時に受付近くにいた夫が迎え入れ、お父さんから事情の説明を受けたそうだ。奥さんが仕事に出てしまっているため、上の子を1人で留守番させるわけには行かず連れて来たと。ここの入場料は子供1人につきで、付き添いの保護者は無料である。保護者から入場料を取らずとも、彼らは大抵の場合、子供たちを遊ばせている間にカフェテリアコーナーでお茶するので飲食料金で稼げるのだ。良心的というより、計算済みの商法であろう。 この子のお父さんは、夫が何も言わなくても上の子の入場料を払ったそうだ。


保護者ホットドリンクサービスは大ウケだった。名札スティッカーの効果も抜群で、控え室には和気あいあいとした雰囲気が漂っていた。だが控え室はスペースが限られており、椅子が数脚あるだけでテーブルがないため、巨大ジャングルジムの向かいのカフェテリアコーナーのテーブル席で世間話をしている保護者もいた。


ロンドン方面から来る私たちの友人とその2歳の息子からは、渋滞で30分ぐらい遅れそうだと連絡があった。一方で、会場の近辺に住む参加者の保護者たちは、渋滞はそれほどではなかったと口を揃えて言った。それでも私の警告メッセージは評判が良かった。


控え室にいた保護者たちと話しをしていると、受付スタッフが「ちょっといいですか?」と私を探しに来た。何事かと思っていると、参加者リストに名前がないゲストが受付に来ていると言う。娘のパーティーの招待状を持っているが、どうするべきかと私の指示を求めて来た。


招待状を出してからこの日まで、返事が一切なかった子(保護者の責任だが)は2人いた。自宅でするパーティーとは違い、こういう会場では最終参加者数を数日前にコンファームしなければならない。招待状に返事の締切日を書いておくべきであったのかもしれないが、私はそれぞれのマナーの常識を信じることにし、RSVPに締切日を追加記入しなかった。


「返事をしない」=「参加しない」と決めつけていたが、まさか当日にそのうちの1人がやって来るとは!受付に行くと、心配そうな顔をした娘のお友達が、何が起こっているのかイマイチ理解出来ていない様子のお父さんと立っていた。


私はお父さんに挨拶をすると、返事がなかったので来れないものと思っていたとフレンドリーな笑顔で言った。するとその子お父さんはバツの悪そうな表情で、今朝突然に奥さんから招待状とラッピングされたプレゼントを渡され、この子をパーティーに連れて行くように頼まれたのだと説明し、返事をしていなかったとは知らなかった、申し訳ないと謝った。


お父さんは確かに無実に見えたし、何故中に入れてもらえないのか理解出来ないこの子は今にも泣き出しそうな顔をしている。この子に罪はない。全く問題はないので中へどうぞ、よく来てくれました!と言い、私は聖母のような慈悲に満ちた笑顔で2人を迎え入れた。


続く

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑨ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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写真は外注したバースデーケーキ

 

たかが4歳児のお誕生日パーティーで競争心を燃やすつもりはないのだが、やはり親というものは見栄と意地に翻弄されてしまう定めにあるのだろうか。あの2週間前のお友達のパーティーは、会場もサービスも手作りケーキもみなグレードが高かった。そのお友達ももちろん娘のパーティーに参加することになっているし、この子のパーティーを経験した他のお友達も数名娘のゲストになっている。あまりにも引けを取る催しでは主役の娘が可哀そうだ(というより親のプライドが許さない?)。「うちはうち、よそはよそ!」と何度自分に言って聞かせてもプレッシャーは収まらない。


会場のグレードの高さでは、どうあがいてもかなわない。だが、参加者の多くがこの会場から車で15分以内の距離に住んでいるため、交通の便という点では私たちのパーティーのほうが若干スコアが高いかもしれない。ところが当日になって、この予期せぬ交通渋滞というニュース。これではせっかくのアドバンテージもおチャラになるだろう。ケーキはご存知のように外注品。パーティーバッグは会場が提供するグッズ次第だが、私たちが独自に用意したものをプラスすれば、引けを取ることはないと思う。さらにプラスチック製ティアラとアメリカンインディアンの羽根飾りという豪華なおまけつきだ。


パーティーで振る舞われる温かい食べ物とソフトドリンクは子供が対象であって、基本的に保護者へのサービスはない。これは、あのお友達のパーティーでもそうであり、保護者は自分たちで適当にコーヒーや紅茶をカフェテリアで自費オーダーしていた。そこで以前から夫は、保護者のドリンクも私たちで負担して、「ケリー家のおもてなし」タッチを加えようと提案しており、私もそのつもりにしていた。この「保護者おもてなしサービス」でかなりのスコアを稼ぐことができるだろう。後はやはり、パーティールームの装飾と給仕される食べ物の質、そして給仕サービスのレベルが重要な評価ポイントであろう。


道中そんなことを考えていた私だが、途中で男の子用のアメリカンインディアンの羽根飾りが1つ足りないことに気づき、ドライバーの夫に急きょ目的地を変更するよう頼んだ。私の性格をすっかり把握している彼は、呆れた態度を見せることなく近所のパーティーグッズ専門店へ進路を変更してくれた。ついでに大人用(自分用)の海賊船船長の帽子も買ってきてくれと言われたが、もう店内のレイアウトがしっかり頭に入っている私は迷うことなく目的の品々が陳列されているスポットに向かい、3分も経過しないうちに任務を完了して車に戻ることができた。


交通渋滞は私たち側の車線はそれほどでもなく、通常より数分余計にかかっただけで無事パーティー開始の25分前に会場入りすることができた。娘が車内で眠り込んでしまったので、夫と娘は駐車場で待機し、私だけ先に小道具類を持って中に入ることにした。


受付で名乗ると、「パーティープランナー」だと自己紹介する若い女の子が出てきた。「女性」ではなく「女の子」という表現を使っているのは、彼女があまりにも幼く見えたからだ。一般的に東洋人よりも老けて見える西洋人だが、天然パーマっぽい金髪に小さな青い目のこの子は、どう見てもティーンエイジャーにしか見えなかった。この若年パーティープランナーに案内されて、日本式1階にあるパーティーゲストの「控室」を視察し、次に日本式2階のパーティールームをチェックしに行った。


この部屋は、あのお友達が使ったパーティールームの4倍近い広さだ。だが、装飾と言えば、壁に「HAPPY BIRTHDAY」のカラフルな文字のバナーが貼り付けられていて、真ん中にセッティングされた子供用の長テーブルにビニール製のディズニープリンセステーブルクロスがかかっている程度だ。よく見ると部屋の奥の隅に、『美女と野獣』のベルと『眠れる森の美女』のオーロラ姫、そしてシンデレラが描かれたボール紙のボードが立っている。シンデレラとオーロラ姫の顔の部分がくり抜かれていて、子供たちがそこから顔を出せるようになっている。部屋の手前半分のスペースはフローリングだが、奥半分はチェス盤のような白と黒の升目模様のフロアになっており、そこに20個ぐらいの風船が転がっていた。パーティールームの装飾では完全に負けだ。だが、この広さは子供たちにも保護者にもウケるかもしれない。


質素な飾り付けに落胆した私だったが、気を取り直してケーキと食べ物をチェックすることにした。入口の右の壁側に給仕テーブルが設置されており、ケーキはここに展示されていた。注文通りディズニープリンセスものだ。白雪姫、ベル、オーロラ姫、シンデレラ、『リトルマーメイド』のアリエル、そして『アラジン』のジャスミンが描かれたアイシングには、「HAPPY 4TH BIRTHDAY Princess ALISA!」と印字されている。やはり私の手作りケーキよりずっと美しい。しかも、娘がリクエストしていた「白雪姫ケーキ」に近いものだろう。


食べ物は給仕する直前に持ってくるということなので、このテーブルにはまだ置かれていなかった。次にチェックを入れたのは会場が用意したパーティーバッグ。女の子用は非ディズニー系プリンセスの塗り絵・工作・シールセットに棒キャンディーがひとつ入ったパック。男の子用は海賊(これまた非ディズニー系)の塗り絵・工作・シールセットに棒キャンディーがひとつ入ったパック。悪くはないが、やはり自分たちで追加パーティーバッグを用意しておいてよかったと思った。女の子用のパックの数が足りないので補足してくれるようにパーティープランナーに頼むと、私はこのテーブルの上にプラスチック製ティアラとアメリカンインディアンの羽根飾りを体裁よく並べ、参加者リストを渡すために受付に戻った。


続く

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑧ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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写真が例のティアラ

 

 

夫も私も、例え土壇場で思いついたことでも実行に移さないと気が済まないタチである。この日も、パーティーの数時間前にあることを思いつき、そのアイデアを実現させるために奔走した。


イデアというのは次のようなものだ。以前から夫が参加する子供たちの保護者に海賊の帽子やアイパッチを配布して仮装してもらおうと提案していたが、保護者ではノリが悪いかも知れない。そこで、子供たちを対象にして、女の子はプリンセスティアラ(紙製)、男の子は海賊のバンダナとアイパッチを配ろうと思いついた。


こういう小道具は、最低でもイベントの1週間前には手配するのが常識であろう。しかし、思いついたのがイベント当日の朝。無謀極まるがやってみないと気が済まない私は、近所のパーティーグッズ専門店へ車を飛ばした。このパーティーグッズ専門店は、外から見るとオシャレなものは置いてなさそうな、ひなびた小さな店なので今まで中に入ったことはなかった。


だが、イベントまであと数時間という切羽詰まった状況では、他に選択肢はない。さすがのアマゾンプライムでも、注文して1時間後に配達は無理であろう。ありがたいことに、車で5分もかからない近所にこのパーティーグッズ専門店がある。中に入ってみると、意外にも4〜5人の客で賑わっていた。


早速お目当ての紙製ティアラと海賊バンダナ+アイパッチを探す。ところが、大人の怪しい系コスプレパーティーグッズばかりで、子供のパーティー用品と言えば、40ペンスでヘリウムを入れて膨らませるサービスも提供されている風船か、いかにも安物っぽいパーティーバッグ用のおもちゃだ。


この店は家族経営と思われるが、店内には物腰の柔らかい初老の女性と彼女の娘と思しき若い女性が注文していた風船を取りに来た客の対応に追われていた。少し待ってやっと落ち着いてきた時、この初老の女性に私が探しているもの伝えた。


初老の女性は少し戸惑ったような表情を見せ、紙製のティアラはないが、プラスチック製のものならあると、店の奥に案内してくれた。すると、レンタル用のコスチュームコーナーの入口に、羽根飾りがベースについたプラスチック製のティアラがいくつか引っ掛けられているボール紙製スタンドがあった。


子供たちにぴったりの大きさのようだが、果たして人数分あるのだろうか。娘のパーティーに参加する女の子は、娘本人を含めて8人。数えてみると、奇跡的にぴったり8個あるではないか!これは日頃の行いが良かった報いだろうか。お値段的にはかなり予算オーバーであったが代替品はないし、せっかくのアイデアを実現させずに諦めたくはない。そこで私は、他の客に取られてしまわないよう、8個のプラスチック製ティアラを抱え込んだ。


次に入手すべきものは、男の子用の海賊バンダナとアイパッチ。ところが、これは大人用しかなく、子供でも使えるのは、アメリカンインディアンの羽根つきヘッドバンド(注: 英語では差別語を避けるためか、Native American Feather Head Bandと表記されていたと思う)のみ。仕方がないので、これを人数分買うことにした。


とりあえず目的は果たしたので大急ぎで帰宅し、お昼ご飯の用意をした。パーティーは14時からだが、主催者である私たちは最低でも15分前には会場入りするように言われていた。だから早めにランチを済ますことにしていた。ランチの途中で会場から電話があり、近辺の主要道路が閉鎖されているために大渋滞が発生していると警告された。この辺の地理と道路に詳しい夫は早速おすすめルートを策定し、それを私が参加者の保護者にテキストメッセージで拡散した。


こうしているうちに私たちが家を出発すべき時間になった。約束通り夫が娘を説得し、私が計画していた衣装に着替えさせることに成功した。パーティーバッグやプラスチック製ティアラとアメリカンインディアンの羽根飾りなどの小道具を夫の車に積み込み、娘をシートに座らせてシートベルトをはめ、いざ家を出発した。


続く

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑦ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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*写真は例の着古しソフィアドレス。この写真ではわかりにくいが、あちこち引き裂かれていて、染みや絵具もそこら中についている。2年前の誕生日プレゼントだった一品で、丈もずいぶんと短くなった

 

 

翌日になっても会場からケーキの連絡はなかった。この日は娘の誕生日だったので、私は公約を果たすために朝からキッチンでせわしなく作業をしていた。娘の4歳の誕生日〜ケーキ編で描写したように、ハプニング連発のストレスに満ちた半日であったため、こちらから電話をかけて確認する余裕はなかった。

 

万が一、パーティーのために再びケーキを自分で作るということになれば、この日のてんてこ舞いの体験はリハーサルであったと言えるかもしれない。だがやはり、あのレベルが高かった娘のお友達のパーティーで、これまたレベルの高い「お母さん手作りバースデーケーキ」を目撃してしまった私には、娘の晴れ舞台でみすぼらしい自家製ケーキを振る舞う勇気はなかった。

 

なぜだか覚えていないのだが、その翌日も会場との連絡は取れなかった。確認できたのはなんと、パーティー前日。ぎりぎりセーフで土曜日のケーキはOKとの朗報に、私は胸をなでおろした。「ディズニープリンセステーマのケーキですよね!」と念を押して受話器を置くと、早速この吉報をグラスゴーに出張中の夫にテキストメッセージで伝えた。このテキストメッセージは今でもスマホのメモリに残してあるが、その時の私の安堵と驚喜ぶりはメッセージに挿入された絵文字の種類と数が物語っている。

 

ケーキの問題は解決したので、私はパーティーバッグの最終確認をした。参加者数より少し多めに用意したつもりであったが、パーティーの10日前に参加をコンファームした子とその子の妹の分を数えるともうスペアがない状態になっていた。まあ人数分あるのだから大丈夫だろうと高を括り、追加注文はしていなかった。

 

そしてパーティーの当日の朝。普段より早く目を覚ました娘は、興奮気味で私たちを起こしに来た。「ねえねえ、今日は私のパーティーの日?」(注:英語)と目を輝かせて訊いてくる娘に「そうだよ!」(注:日本語)と答えると、「わ~~い!すっごいエキサイティング!」(英語)と大はしゃぎ。私たちのベッドの上で数回飛び跳ねると、自分の部屋へ飛んで行った。洋服ダンスを開ける音が聞こえてきたので様子を見に行くと、使い古してボロボロになった『ちいさなプリンセス ソフィア』のドレスを着ようとしているではないか。

 

「Aちゃん、それはもうボロボロだし、背が伸びて丈が短くなったから、違うドレス着ようよ。新しいソフィアのドレス、前に買ってあげたでしょ!」と私が日本語と諭すと、娘は「やだあ!」と日本語で答えてから、「こっちがいい!新しいのはまだ私には丈が長すぎるもん」と英語で反論した。しかし、こんなボロボロのみすぼらしいコスプレドレスでは、まるで魔法使いのおばあさんに出会う前のシンデレラではないか。お誕生日パーティーにこんな着古しのドレスを着せるなんて、なんてひどい親だと品格を疑われかねない。私は必死に娘を説得しようとしたが、本人は全く聞く耳なし。頑固なのは私譲りなのだろうか。

 

お手上げ状態で夫に助けを求めると、「今は好きなようにさせたら?会場に行く直前に着替えさせたらいいじゃん」と悟りに満ちた態度で返事をされた。そう言われてみればそうなのだが、私は数日前からこの日の娘の衣装を計画していた。数週間前までは、お誕生日パーティー用に晴れ着というか、可愛いパーティードレスを買ってやろうかなと考えていた。しかし、会場が屋内遊び場であり、子供たちは汗だくになるまで目一杯はしゃいで遊びまくるであろうから、それは適切ではないと判断した。

 

そこで私が勝手に決めた衣装は、一年前に近所のスーパーで見つけた『塔の上のラプンツェル』のドレス。これはコスプレドレスというよりは普段着っぽい一品で、スカート部分にチュールがあしらわれており、これが巨大滑り台で大当たりなのだ。これを着て滑り台を降りるともの凄くスピードが出るため、娘は屋内遊び場に行くときには喜んで着ている。かなり使い込んでいるが、まだまだ上々のコンディションだ。ジャングルジムをよじ登ってパンティが丸見えになってはいけないので、パーティーの1週間前に同色系のレギングを買った。ドレスそのものはライラック色(薄紫)であるため、コントラストを演出するダークパープルのレギングを選んでいた。その時には助太刀するからという夫の助言に従い、家を出る直前にこの衣装一式に着替えさせることにした。

 

続く

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑥ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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*写真は近所のスーパーにも置いている既製品のケーキ

 

 

この娘のお友達のパーティーは実にレベルが高かった。かなりお高めのパーティー料金なのだろうと思っていたが、受付で入手したパーティープランのパンフレットを見ると、私たちの会場より1ポンド程度高いだけであった。恐れていた通り、娘はこの会場にすっかり魅せられ、自分のお誕生日会もここでしてくれとねだり出した。テーマ別のパーティールームのひとつがディズニープリンセスものであることもしっかりチェックしていた。わが娘ながら実に目ざとい。お友達のパーティーが終わって帰宅する車の中で、娘はこの会場で開く自分のパーティーの計画を延々と語った。

 

ディズニープリンセステーマのお誕生日パーティー」という点に関しては条件を満たしている。だが、会場はすでに行きつけの屋内遊び場に決まっていて、デポジットも払ってある。このデポジットはキャンセルしても戻ってこないし、招待状もすでに発行済みだ。がっかりさせたくはないが、今更会場変更などできない。「XXちゃんと同じとこで私のパーティーやるのよね!でもプリンセスルームよね!ケーキはプリンセスがいっぱいのっかってて、ピンクで真ん中に白雪姫が立ってるのがいい!お友達もみんなプリンセスのドレスを着るの!」(注:実際のセリフは英語)とはしゃぐ娘に、「さあ、どうかな?お楽しみに!」(注:私の返事は日本語)と誤魔化すしかなかった。

 

娘のパーティーの参加者数を正式にコンファームしたのは、イベントの4日前のことだった。会場から確認の電話がかかってきたのだ。最初に予約を入れてデポジットを払ったとき、ケーキも注文することができるとのことだったので、ずっとそのつもりにしていた。手作りケーキは誕生日の当日に焼いて保育園に持って行くと公約していたから、2度も自分を追い込むつもりは一切ない。ところが、参加者数をコンファームした際にケーキを注文すると、手遅れかも知れないと言われた。通常、土曜日に開催されるパーティーのケーキはその週の月曜日までに注文しないといけないとか。これには愕然となった。

 

そんなことは予約時に聞いていない。会場のカフェテリアで売られている「普段用」のケーキ類のように調理場のシェフが作るのだと思い込んでいたが、実はバースデーケーキは業者に外注しているのだという。業者といってもベーカリーやケーキ屋さんではなく、本業は外科医の女性なのだそうだ。驚きの発見にうろたえた。電話口の担当者は、その「業者」に今から注文しても土曜日のパーティーに間に合うか問い合わせてみると言う。「なんとかお願いしますっ!!!」と私は切羽詰まった声で訴えた。

 

ただでさえご指定の会場ではないという大きなハンデがあるのに、ケーキでさらに娘を落胆させるわけにはいかない。最悪の場合は近所のベーカリーかスーパーで出来合い品を購入ということになるだろうが、この辺のベーカリーやスーパーで販売されている既製のバースデーケーキは、人工着色料が大量に使用されていそうな派手な色のアイシング(しかも恐ろしいほど甘い)に覆われ、えげつない量の人工甘味料と保存剤が入っていそうなジャム系のフィリングがサンドされたかなり硬めスポンジケーキかチョコレートケーキが主流だ。父親同様チョコレートに目がない娘だが、不思議なことにチョコレートケーキは嫌がる。ロンドン市内なら、もっとナチュラルでヘルシーな原材料を使ったオシャレなケーキも見つかるだろうが、ここアスコット近辺でそのようなものを見かけたことはない。

 

ケーキが土曜日に間に合うかどうかは翌日に連絡するとのことだったので、私はすがるような思いでその日一日を過ごした。

 

続く

娘の4歳の誕生日〜パーティー編⑤ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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*写真はこのグレードの高いお誕生日パーティーでの1シーン

 

エルサに誘導されて、私たち3人は娘のお友達のパーティーグループのために確保されている長テーブルへ向かった。娘はお友達を見つけると、大急ぎで靴を脱ぎ(ジャングルジムフレーム内は土足禁止)、わーッと歓声をあげてフレームの方へ駆けて行った。


夫と私はバースデーガールのお父さんを見つけると、招待してもらったお礼を述べた。バースデーガールがフレームから戻ってきたので娘を呼び戻し、プレゼントとカードを本人に手渡すように促した。


プレゼント進呈式が終わると、子供たちは一目散に再びプレイゾーンへ駆けて行った。それにしても、なんて大きな屋内遊び場だ。フレームそのものの大きさは私たちの会場より少し大きいぐらいだが、その周囲に様々なコーナーがある。座って足でこぐプラスチック製の車のコーナーには、パトカーや消防車、救急車、タクシーなどがある。娘は仲良し3人組とここで長いこと遊んでいた。フレーム内の大型滑り台も私たちの会場のものと同レベルだが、その横にはほぼ垂直と言える勾配の超高速滑り台もある。これには夫も興味をそそられたようで、はりきって試しに行った。


私は他のお友達のお母さんたちと、カフェオレを飲みながら世間話で盛り上がった。超高速滑り台のトライアルを無事に遂行した夫は、このどデカいプレイセンターを探索し、えらく感心した様子でその結果を報告しに来た。私たちが座っているプレイゾーンのカフェエリアの奥に、テーマ別のコスプレルームが6室ぐらいあるとのことなので、私も視察しに行ってみることにした。


すると確かに、プリンセスルームや海賊ルーム、病院ごっこルーム、キッチンごっこルーム、警察官&消防士ルームなどがあり、それぞれのテーマに沿ったコスチュームと小道具がかなりの数揃っている。さらに、これは6歳児以上が対象のようだが、Wiiっぽい全身駆動型ビデオゲームルームもある。凄い。至れり尽くせりだ。


気がつくと、娘と数名のお友達がプリンセスのコスプレに興じていた。男の子たちは自然と海賊ルームか警察官&消防士ルームに行く。親にそのように仕込まれたわけでもないのに、本能的に女の子と男の子では興味の対象が異なる。私たちも、娘が女の子だからといって、プリンス系やピンク色の衣服やおもちゃを勧めていた覚えはないのに、本人はプリンセスとピンクにどっぷりだ。


1時間15分ぐらい経つと、エルサとオーロラ姫が私たちのテーブルに戻ってきて、子供たちを集合させてくれと言った。広大な施設なので全員を集合させるのに少し時間がかかったが、皆が揃うと2階(日本式)のパーティールームへと誘導された。私たちのグループのパーティールームは、下の階から階段で上がって一番最初の部屋だった。


縦長の部屋には長テーブルと低いプラスチック製の椅子が設置されており、部屋中が『アナ雪』のテーマで装飾されている。バースデーガールの席は、雪の結晶が描かれた透明のプラスチック製の王座。紙製のお皿にも、壁紙にも、もどきではない本物のエルサとアナが描かれている。やはり女の子向けであるためか、クリストフやオラフの姿があまり見られない。天井を見上げると、白やシルバーの雪の結晶やクリスマスツリーのデコレーションのようなシルバーの玉があちこちからぶら下がっている。子供たちも保護者も感嘆の声をあげた。


さらによく見ると、部屋の奥にアナとエルサのコスチュームがずらっと衣装ハンガーラックに並んでいる。しかもこのハンガーラックは、4~5歳児の身長に合わせた高さだ。細かいところにまで気遣いが感じられる。子供たちに給仕された食事は、フライドチキン、ソーセージ、ハムサンドウィッチ、フライドポテトだった。給仕しているエルサとオーロラ姫を数名のお母さんたちが手伝い、子供たちに飲み物を与える。


暖かい食べ物の後はお菓子のサービス。カップケーキとビスケットが出てきた。そして本日の目玉商品のバースデーケーキ。ホワイトとターコイズ色のアイシングが施された大きな丸形のケーキの上に、プラスチック製のエルサのフィギュリンが載っている。これは、この業界で定評のあるBullylandというドイツのメーカー製のもので、娘も全くおなじエルサのフィギュリン以外にも数多くのディズニーキャラクターのフィギュリンを持っていて、お風呂の友になっている。このケーキはバースデーガールのお母さんが手作りしたそうだ。凄腕すぎる。夫と私は、2週間後に控えた娘のパーティーを思い、プレッシャーが全身にこみ上げてくるのを感じた。

 

続く

娘の4歳の誕生日〜パーティー編④ ー 注:これは今年6月に他のメディアに投稿した記事のリサイクル版

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*写真は私が利用したパーティーグッズ専門ネットショップから拝借。だが写真のものを注文した訳ではない。

 

子供の誕生日パーティーを計画するにあたって重要なのは、会場選びと招待する子供たちの人選、そして来てくれた子供たちに渡す「パーティーバッグ」なのだと夫に言われた。しかも、その中身でホストである一家の格式を判断されると言う。まるで結婚式の引き出物ではないか。高価すぎてもいけないし、安物ばかりでもいけない。もらって迷惑なくだらないおもちゃも避けるべき。キャンディーなどのお菓子も少し入れた方がいい。私は会場のパーティープランにパーティーバッグも含まれているからそれでいいのではと思っていたが、夫は中身を前もって確認し、場合によっては自分たちで選んだグッズを追加するべきだと主張した。


会場に問い合わせて確認すると、塗り絵やシール、工作セットとキャンディーとのことだった。夫が納得していないようだったので、パーティーグッズ専門のネットショップをチェックしてみることにした。日本では知らない人も多いかもしれないが、ウイリアム王子を射止めたあのケイト妃の両親は、パーティーグッズの通信販売ビジネスで富を築き上げた。起業する前は2人ともブリティッシュ・エアウェイズの社員だった。私は昔から、たかがパーティーグッズの通販でなんであんなに金持ちになれるのか不可解に感じていた。だが、こうして自分が子供のパーティーを企画する身になってみると、確かに需要がかなりあるということに気がついた。


だが、私はケイト妃の両親のファンではないので、彼らのネットショップはチェックしなかった。なかなかいい感じのネットショップを見つけたので、そこでパーティーバッグ用の品をいろいろと物色してみた。子供たちの年齢を考慮し、親の視点からも子供の視点からでもウケそうなものを見つけるのは簡単なことではない。自分なりにいいなと思ったものを選択し、念のために夫にも見せてOKを得てから注文した。


実は、娘のパーティーの2週間前に、大の仲良しのお友達のパーティーに招待されて行ってきた。この子の両親も、私たちと同じように屋内遊び場を会場に選んでいたが、そこは今まで私たちが行ったことのない場所だった。招待状には、「Frozen Kingdom」テーマのパーティーと書かれており、『アナ雪』を真似しているのが見え見えのキャラクターが描かれていた。私たちの会場より少し遠い。初めて行く場所だったので、事前にホームページをチェックしてみた。すると、私たちが住んでいるバークシャー州で最新かつ最大規模の屋内プレイ&パーティーセンターと誇らしげに書かれていた。しかも、テーマ別のパーティールームが8部屋もあるとか。これは凄い!


パーティーの当日、iPhoneのナビを使いながら会場へ向かった。到着したのはオフィスビルや倉庫が軒を並べるビジネスパーク。会場の看板を見つけて駐車場に入ると、目の前にはどデカいボックス型の建物が構えていた。入口ドアを開けて受付に入ると、後ろに広がる巨大な遊び場と、圧倒されるぐらいの数のテーブルと椅子が目に飛び込んできた。その日はお誕生日パーティーが4組ぐらいあり、それぞれの組に個別の受付エリアが設けられていた。各お誕生日パーティーにコスプレ姿のスタッフが2人配属されている。娘のお友達のパーティーは、『アナ雪』のエルサ姿のお姉さんと、『眠れる森の美女』のオーロラ姫姿のお姉さんが担当だった。


続く